家族会議(ファミリーミーティング)の続け方|議題・頻度・進行役・記録をどう決め、一度きりで終わらせないか

自宅の庭で語らう三世代の家族

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家族会議を続けるコツは、「話し合いの中身」より先に「続けるための型」を決めてしまうことです。具体的には、①開く時期と議題をあらかじめ年間で決める、②参加する家族の範囲を段階的に広げる、③進行役と記録係を決める、④その場で結論を出さないルールを持つ、⑤家族会議で決められることと、会社の機関で決めることを分けておく——の5つです。

事業承継や相続の準備として家族会議を開く方は増えています。中小企業庁の「事業承継ガイドライン(第3版)」も、後継者を誰にするかは親族にとって強い関心事であるとして、早期に家族会議・親族会議を開き、親族との対話を図ることが極めて重要だとしています。ところが実際には、「一度集まって話はしたが、その後は開かれていない」という家族が少なくありません。

この記事では、家族憲章の有無にかかわらず、家族会議を継続的に運営していくための実務を整理します。

家族会議が続かない理由

最初に、家族会議が途切れてしまう典型的な理由を見ておきます。

  • 議題がない:最初の会議で大きな話をした後、「次に何を話せばよいか」が決まっておらず、自然消滅してしまう。
  • 親の独演会になる:オーナーが方針を伝える場になり、子世代が意見を言いにくい。参加する意味を感じられなくなる。
  • もめるのが怖い:一度意見がぶつかると、次に集まること自体が気まずくなる。
  • 記録がない:何を話し、何に合意したのかが残っておらず、次の会議で同じ話を繰り返す。
  • 会社の会議と混ざる:家族会議で決めたつもりのことが、会社として正式に決まっていない。

いずれも、話し合いの内容の問題ではなく、運営の型がないことから生じています。裏返せば、型を整えれば多くは防げます。

家族会議の位置付けを決める:株主総会・取締役会との違い

家族会議を続けるうえで最初に確認しておきたいのが、家族会議は法律上の機関ではないという点です。同族会社では、同じ顔ぶれが家族会議にも株主総会にも取締役会にも出席することがあるため、三つの場が混同されがちです。

項目家族会議株主総会取締役会
根拠家族の任意の取決め会社法会社法(設置は定款による)
参加者家族が決めた範囲株主取締役(監査役も出席)
主に扱うこと情報共有、家族としての方針、次世代の育成、財産の状況役員の選任・解任、定款変更、配当などの法定事項業務執行の決定、取締役の職務の監督、代表取締役の選定
決めたことの効力家族間の合意にとどまる会社の意思決定として効力がある会社の意思決定として効力がある
記録任意(残すことが望ましい)議事録の作成が必要(会社法第318条)議事録の作成と出席取締役・監査役の署名等が必要(会社法第369条)

家族会議で「来年から長男を取締役にしよう」と話がまとまっても、それだけで役員が決まるわけではありません。役員の選任は株主総会の決議によります(会社法第329条)。家族会議は、会社の正式な手続に入る前に家族としての考え方をそろえる場であり、会社の意思決定そのものではない——この区別を最初に家族で共有しておくと、後の混乱を防げます。

また、家族会議の場で会社の未公表の情報をどこまで共有するかも、あらかじめ決めておきたい点です。会社で働いていない家族株主にとって、会社の状況を知る機会は貴重ですが、従業員や取引先に関わる情報の扱いには配慮が必要です。

年間の議題カレンダーをつくる

「議題がない」問題を防ぐ最も確実な方法は、1年分の議題を先に決めておくことです。毎回ゼロから議題を考えるのではなく、季節ごとに定番の議題を置き、そこに臨時の議題を加えていきます。たとえば、年2回の定例会を基本にする場合、次のような組み立てが考えられます。

時期定番の議題ねらい
決算の確定後会社の業績と今後の方針の共有、配当の考え方の説明、家族が持つ株式や不動産の状況株主である家族に、会社と財産の現状を知ってもらう
年の後半家族の近況、次世代の学びや進路の共有、家族としての社会貢献や行事会社に関わらない家族も含めて、関係を温める
年末(定例会の最後に)財産一覧の更新、遺言・保険・民事信託(いわゆる家族信託)などの見直しの要否の確認、翌年の議題の決定備えを点検し、次につなげる
臨時代表者の交代、相続の発生、大きな投資や売却、家族の結婚・独立など大きな変化を家族で早めに共有する

頻度は家族の状況によって異なります。毎月集まる必要はありませんが、年1回では間が空きすぎて前回の内容を忘れてしまうことが多いため、年2回程度の定例会と、必要に応じた臨時会の組み合わせが現実的です。日程は前年のうちに決めておくと、遠方に住む家族も予定を合わせやすくなります。

参加する家族の範囲を段階的に広げる

最初から親族全員を集めると、話がまとまらないだけでなく、家族の中で温度差が表面化しやすくなります。参加範囲は、段階的に広げていくのが無理のない進め方です。

  1. 第1段階:親世代と後継者候補 まず現オーナーと後継者候補で、家族会議の目的と進め方をすり合わせます。
  2. 第2段階:子世代全員 会社に関わっているかどうかにかかわらず、子世代のきょうだい全員に参加してもらいます。株式や財産を将来相続する可能性がある以上、当事者だからです。
  3. 第3段階:配偶者 子世代の配偶者の参加は、家族の考え方が分かれやすい点です。生活を共にする配偶者の理解が得られないと、家族の判断に影響が出ることもあります。一方で、財産の詳細を共有する範囲は慎重に考えたいところです。議題によって参加を分ける方法もあります。
  4. 第4段階:孫世代 孫世代は、まずは行事や近況共有の回に参加してもらい、年齢に応じて会社や財産の話にも加わってもらいます。次世代への伝え方は、関連記事「次世代教育をどう進めるか」でも解説しています。

誰を参加者とするかは、家族ごとに答えが異なります。大切なのは、参加の範囲と理由を家族の中で説明できるようにしておくことです。

進行役と記録係を決める

進行役は「親以外」が基本

家族会議が親の独演会になるのを防ぐには、オーナー自身が進行役を務めないことが効果的です。子世代が持ち回りで進行役を務める方法は、次世代に場を任せる練習にもなります。

外部の進行役を使うとき

意見の対立が予想される議題や、家族だけでは話しにくい相続の話を扱うときは、家族以外の進行役を入れることも選択肢です。外部の進行役には、税務・法務の論点を理解していることに加え、特定の家族の代理人ではなく、家族全体に対して中立であることが求められます。会社の顧問を務める専門家に依頼する場合は、会社と家族、あるいは家族の間で利害が分かれる議題では立場が難しくなることもあるため、役割の範囲を事前に確認しておくと安心です。

感情的な対立をどう扱うか

家族会議では、意見の違いが感情のぶつかり合いに発展することがあります。対立をなくすことはできませんが、こじらせない工夫はできます。

  • その場で決めない:重要な事項は、会議では意見を出し合うだけにして、結論は次回以降に持ち越すルールにします。持ち帰って考える時間が、感情を落ち着かせます。
  • 「事実」と「気持ち」を分けて話す:会社の数字や財産の状況などの事実と、それに対する一人ひとりの受け止め方を分けて扱います。
  • 発言の機会をそろえる:一人ずつ順番に話す時間を設け、声の大きい人だけで議論が進まないようにします。
  • 個別に話を聞く:会議の場では言いにくいことがある家族には、会議の前後に個別に話を聞く機会をつくります。
  • 対立が深いテーマは切り分ける:相続の取り分のように対立が深いテーマは、家族会議の議題から外し、専門家を交えた別の場で扱うことも検討します。

家族会議の目的は、全員の意見を一つにすることではなく、違いがあることを互いに理解したうえで、家族として続けていける関係を保つことです。

記録の残し方

家族会議の記録は、法律上の義務ではありません。しかし、記録がないと、合意したことが曖昧になり、時間がたってから「そんな話は聞いていない」という行き違いが起こります。記録には、次の項目を残しておくと十分です。

  • 日時・場所・参加者
  • 共有した情報(資料があれば添付)
  • 出た意見の要旨(発言者を特定しすぎない書き方も選択肢です)
  • 家族として合意したこと
  • 次回に持ち越したこと
  • 会社の手続や法的な手続が必要な事項と、その担当者

最後の項目が特に重要です。家族会議で合意した内容のうち、株主総会や取締役会の決議、遺言の作成・変更、契約の締結などが必要なものは、「手続が必要」と明記し、誰がいつまでに進めるかを記録します。家族会議の記録と会社の議事録は、保管場所も分けておくと混同を防げます。記録の保管と共有は、ファミリーオフィスや家族の中の事務局役が担うと継続しやすくなります。

AEGISの視点

家族会議の相談を受けると、多くの方が「何を話すか」に関心を向けます。しかしAEGISは、家族会議が続くかどうかを分けるのは、話す内容よりも、続けるための型があるかどうかだと考えています。議題、日程、参加者、進行役、記録の5つが決まっていれば、話しにくいテーマにも少しずつ近づいていけます。

また、家族会議は家族の側の場であり、会社や法律の手続とは別に存在します。家族会議で合意した方針を、取締役会や株主総会、遺言や契約といった正式な手続に落とし込んで初めて、その合意は実際に守られるものになります。AEGISは、家族会議の記録を起点に、会社の手続、税務、遺言などの手当てを一つの流れとしてつなげていくことを大切にしています。家族会議の位置付けをファミリーガバナンスの全体像の中で確認したい方は、関連記事「ファミリーガバナンスとは何か」をご覧ください。家族の価値観を文書にまとめる段階に進む場合は「ファミリー憲章のつくり方」が参考になります。遺言の内容を家族会議でどこまで共有するかは、「遺言の内容を家族に伝えるか、伏せるか」で取り上げています。

まとめ

  • 家族会議を続けるには、話し合いの中身より先に、議題・日程・参加者・進行役・記録の「型」を決めることが有効です。
  • 家族会議は法律上の機関ではなく、役員の選任などの会社の意思決定は株主総会や取締役会で行う必要があります。
  • 年2回程度の定例会と臨時会を組み合わせ、年間の議題カレンダーを先に決めておくと途切れにくくなります。
  • 参加者の範囲は段階的に広げ、進行役はオーナー以外が務めるのが基本です。
  • 重要な事項はその場で決めず、合意事項のうち会社や法律の手続が必要なものは、記録に担当者と期限を残します。

よくある質問

Q. 家族会議はどのくらいの頻度で開けばよいですか?

家族の状況によりますが、年2回程度の定例会に、代表者の交代や相続など大きな変化があったときの臨時会を組み合わせる形が現実的です。年1回だと間が空き、前回の内容が引き継がれにくくなります。日程は前年のうちに決めておくと、参加しやすくなります。

Q. 家族会議で決めたことに法的な効力はありますか?

家族会議は法律上の機関ではないため、そこでの合意は家族間の合意にとどまります。役員の選任や定款の変更などは株主総会、業務執行の決定は取締役会など、会社の正式な手続で決める必要があります。財産の行き先についても、遺言や契約などの手続が必要です。

Q. 家族会議に配偶者は参加させるべきですか?

家族ごとに考え方が分かれる点です。配偶者の理解があることで家族の判断が安定する面がある一方、財産の詳細を共有する範囲は慎重に考えたいところです。行事や近況共有の回には参加してもらい、財産の詳細を扱う回は参加者を限るなど、議題によって分ける方法もあります。

Q. 家族だけでは話がまとまらない場合はどうすればよいですか?

重要な事項はその場で決めず、意見を出し合った後に持ち帰るルールにすることが第一です。それでも対立が深い場合は、家族全体に対して中立な立場の外部の進行役を入れたり、対立の深いテーマを別の場で扱ったりすることを検討します。

Q. 家族会議の議事録は必要ですか?

法律上の義務はありませんが、残すことを強くおすすめします。日時・参加者・共有した情報・合意したこと・持ち越したこと・必要な手続と担当者を記録しておけば、後の行き違いを防ぎ、次回の議題づくりにも役立ちます。

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参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『資産家のためのファミリーガバナンスガイドブック 〜相続・事業承継・資産運用・ファミリーオフィス〜』辻・本郷 税理士法人 ファミリーオフィス事業部、辻・本郷 ファミリーオフィス株式会社、岩崎隼人 編著、東峰書房、2025年1月、P.55-60、P.82-93、P.214-215
  • 『ファミリービジネス白書 2018年版 ―100年経営とガバナンス―』ファミリービジネス白書企画編集委員会 編、後藤俊夫 監修、白桃書房、2018年5月、P.16-17、P.129-135

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。