同族会社の取締役会に社外の目を入れる|社外取締役・監査役・顧問・アドバイザリーボードの違いと選び方

高層ビルを望む会議室で、年配の経営者と若い男性を中心に5人が会議卓を囲み話し合う様子

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非上場の同族会社には、原則として社外取締役を置く義務はありません。それでも、家族だけで構成された取締役会に社外の目を入れることには、経営の監督、異なる視点からの助言、後継者の育成、家族間の緩衝材という、法律上の義務とは別の価値があります。

この記事の結論は次のとおりです。

  • 社外の目を入れる方法には、社外取締役・監査役・顧問・アドバイザリーボードの4つがあり、会社法上の地位、権限、責任、報酬の扱いがそれぞれ異なります。
  • 会社法上の社外取締役には、オーナーの配偶者や二親等内の親族でないことなどの要件があり、家族は社外取締役になれません。
  • 選ぶ順番は「誰を入れるか」より先に、「何のために入れるか」を決めることです。目的によって、適した方法も人選も変わります。

家族だけの取締役会で起きやすいこと

同族会社の取締役会では、オーナー、配偶者、後継者の子といった家族が取締役を務めていることが少なくありません。意思決定が速く、長期的な視点で経営できるのは同族経営の強みです。一方で、次のようなことも起こりやすくなります。

  • 経営者を交代させる仕組みが働きにくい:大株主と経営者が同じ人物であるため、業績が悪化しても経営者の責任を問う人がいません。
  • 家族の事情が経営に持ち込まれる:親子やきょうだいの関係が、そのまま取締役会での発言のしやすさに影響します。
  • 後継者が率直な評価を受けにくい:家族の中では遠慮もあり、後継者が経営者としての力量について客観的な意見を聞く機会が限られます。
  • 外部への説明力が弱くなる:金融機関や従業員、取引先に対して、意思決定の過程を説明しにくくなります。

ファミリービジネスの研究でも、取締役会の構成や人選、家族の雇用と報酬は、家族の側のルールと会社の仕組みが重なり合う論点とされています。社外の目を入れることは、この重なりを整理する手段の一つです。

会社法の基本:同族会社に設置義務はあるのか

取締役会や社外取締役を置く義務

株式会社には、1人以上の取締役を置く必要があります(会社法第326条第1項)。取締役会は、公開会社などを除き、定款で定めた場合に置く任意の機関です(同法第327条第1項)。取締役会を置く場合、取締役は3人以上必要で(同法第331条第5項)、原則として監査役も置かなければなりません(同法第327条第2項。公開会社でない会計参与設置会社を除く)。

社外取締役の設置が義務付けられているのは、公開会社かつ大会社である監査役会設置会社のうち、有価証券報告書の提出義務がある会社などに限られます(同法第327条の2)。すべての株式に譲渡制限がある非上場の同族会社であれば、通常は社外取締役を置く義務はありません。つまり、同族会社が社外の目を入れるかどうかは、会社と家族が自ら選ぶことです。

「社外取締役」には要件がある

会社法上の社外取締役は、単に外部から招いた取締役という意味ではありません。主な要件として、次のようなものが定められています(会社法第2条第15号)。

  • その会社や子会社の業務を執行する取締役や使用人でなく、就任前10年間もそうでなかったこと
  • 親会社等(自然人であるものに限る)や、その会社の取締役・重要な使用人などの配偶者または二親等内の親族でないこと など

同族会社で重要なのは後者です。オーナーの配偶者、子、きょうだいといった家族は、社外取締役の要件を満たしません。たとえ会社の業務に関わっていない家族であっても、「社外」とは扱われない点に注意が必要です。

社外の目を入れる4つの方法の違い

社外の目を入れる方法は、社外取締役だけではありません。AEGISでは、次の4つを目的に応じて使い分けることをおすすめしています。

項目社外取締役監査役顧問アドバイザリーボード
会社法上の地位役員(取締役)役員(監査役)なし(契約による)なし(任意の助言機関)
取締役会での議決権ありなし(出席して意見を述べる)なしなし
主な役割経営の監督、重要な意思決定への参加取締役の職務執行の監査(定款で会計に限定できる場合あり)専門分野についての助言複数の外部有識者による経営全般への助言
選任・解任株主総会の決議(会社法第329条、第339条)株主総会の決議(同上)会社との契約会社が任意に設置
会社に対する責任任務を怠ったときの損害賠償責任(会社法第423条)同左契約上の責任契約上の責任
報酬の決め方定款または株主総会の決議(会社法第361条)定款または株主総会の決議(会社法第387条)契約で定める契約で定める
向いている場面経営の監督を本格的に強めたい、後継者の経営を支える体制をつくりたい会計や業務の適正さを外部の目で確かめたい特定の分野で継続的な助言がほしいまず気軽に外部の意見を取り入れたい

監査役は「会計に限定」できる場合がある

公開会社でない株式会社(監査役会設置会社と会計監査人設置会社を除く)は、定款で監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定できます(会社法第389条第1項)。中小の同族会社では、この会計限定の監査役が置かれていることも多く、その場合、業務全般の監督という役割は期待しにくくなります。社外の目を入れる目的が経営の監督にあるなら、監査の範囲がどうなっているかを定款で確認しておく必要があります。

顧問・アドバイザリーボードは「経営に従事」しない範囲で

顧問やアドバイザリーボードは、会社法上の役員ではないため、選任の手続が簡単で、役割も柔軟に決められます。その反面、取締役会で議決権を持たないため、助言にとどまります。

税務の面では注意点があります。法人税法上の役員には、会社法上の取締役や監査役だけでなく、相談役や顧問などで、その法人内での地位や職務などからみて実質的に法人の経営に従事していると認められる人も含まれるとされています(国税庁 タックスアンサーNo.5200)。役員に対する給与は、定期同額給与など一定の要件を満たすものでなければ損金に算入されません(同No.5211)。顧問として招いた人が実際には経営の意思決定に深く関わっている場合、その報酬の税務上の扱いが変わる可能性があるため、役割と報酬の決め方を事前に整理しておくことが大切です。

選び方:目的から逆算する

目的を一つに絞る

「社外の目」に期待することは、会社と家族によって異なります。たとえば、次のような目的があります。

  • 後継者の経営判断を、経験のある経営者の目で見てほしい
  • 家族間で意見が割れたときに、中立的な立場から意見を述べてほしい
  • 金融機関や従業員に対して、意思決定の透明性を示したい
  • 財務や法務、特定の業界についての専門的な助言がほしい

目的が「監督」にあるなら社外取締役、「専門的な助言」にあるなら顧問、「幅広い意見を聞きたい」ならアドバイザリーボードというように、目的によって適した方法が変わります。

人選で確認したいこと

  • 独立性:オーナーや家族と個人的に親しすぎる人では、率直な意見が出にくくなります。会社の取引先や、会社から多額の報酬を受けている専門家も、利害関係の有無を確認します。
  • 経験と専門性:自社の課題に照らして、どのような経験を持つ人が必要かを明確にします。
  • 時間を割けるか:取締役会への出席や事前の資料の読み込みに、十分な時間を割ける人であることが前提です。
  • 家族との相性:家族の価値観や会社の歴史に敬意を払いつつ、言うべきことを言える人が理想です。

任期・情報提供・責任の範囲を決めておく

公開会社でない株式会社では、定款で取締役や監査役の任期を最長10年まで伸ばすことができます(会社法第332条第2項、第336条第2項)。ただし、社外の人を迎える場合は、任期を短めに設定し、定期的に役割を見直せるようにしておく方が、会社と本人の双方にとって無理がありません。

また、社外取締役が実際に役割を果たすには、取締役会の前に十分な資料が届くことが欠かせません。情報が届かない状態では、監督も助言もできないからです。

責任の範囲についても、事前に確認しておきます。会社は、業務を執行しない取締役や監査役との間で、損害賠償責任の上限を定める責任限定契約を結べる旨を定款で定めることができます(会社法第427条第1項)。役員等の賠償責任に備える保険契約(同法第430条の3)とあわせて、社外の人が安心して引き受けられる環境を整えることも、人選の一部と考えるとよいでしょう。

始め方:小さく始めて、段階的に広げる

いきなり社外取締役を迎えることに抵抗がある場合は、段階的に進める方法があります。

  1. アドバイザリーボードや顧問から始める:年に数回、外部の有識者に経営の状況を説明し、意見を聞く場を設けます。
  2. 取締役会の運営を整える:議題と資料を事前に配り、議事録を残すなど、外部の人が参加できる取締役会の運営に整えます。取締役会の議事録の作成は、取締役会設置会社では法律上の義務でもあります(会社法第369条第3項)。
  3. 社外取締役を迎える:運営が整い、信頼できる人が見つかった段階で、株主総会で社外取締役を選任します。

後継者への承継を控えた時期は、社外の目を入れる好機でもあります。先代と後継者の間に立つ第三者がいることで、権限の移行が円滑になることがあるからです。先代と後継者の関係については関連記事「先代が経営から退かないとき」で、家族以外の人に経営を任せる場合の考え方は「家族以外の経営者を迎えるとき」で取り上げています。

AEGISの視点

同族会社のオーナーから「社外取締役を入れるべきでしょうか」と相談を受けることがあります。AEGISは、この問いには「何のために」を決めないまま答えられないと考えています。法律上の義務がない以上、社外の目を入れるかどうかも、どの形で入れるかも、会社と家族が自ら選ぶことです。目的が定まっていない社外取締役は、形だけの存在になりやすく、かえって「外の人を入れても変わらない」という失望を生むことがあります。

また、社外の目は、会社の側だけでなく、家族の側のルールとも結び付いています。誰を取締役にするか、家族が会社で働くときの処遇をどうするかは、家族会議や家族憲章で話し合う論点でもあります。家族の側で方針を整理し、その方針を会社の取締役会で実行し、社外の目がそれを確かめる——という役割分担ができると、ファミリーガバナンスは実際に機能し始めます。家族の側のルールとの関係は、関連記事「ファミリーガバナンスとは何か」で整理しています。

まとめ

  • 非上場の同族会社には、原則として社外取締役の設置義務はなく、社外の目を入れるかどうかは会社と家族が選ぶことです。
  • 会社法上の社外取締役には要件があり、オーナーの配偶者や二親等内の親族などの家族は社外取締役になれません。
  • 社外取締役・監査役・顧問・アドバイザリーボードは、地位、権限、責任、報酬の扱いが異なり、目的に応じて使い分けます。
  • 顧問であっても実質的に経営に従事していると、税務上は役員とされる可能性があるため、役割と報酬を事前に整理します。
  • 具体的な機関設計や人選は、会社の規模や家族の状況によって異なります。

よくある質問

Q. 非上場の同族会社でも、社外取締役を置かなければなりませんか?

通常は置く義務はありません。社外取締役の設置が義務付けられているのは、公開会社かつ大会社である監査役会設置会社のうち、有価証券報告書の提出義務がある会社などです。同族会社が社外取締役を置くかどうかは、経営の監督や後継者の育成などの目的に照らして、自ら判断することになります。

Q. 経営に関わっていない妻や子を「社外取締役」にできますか?

できません。会社法上の社外取締役の要件には、会社の取締役や重要な使用人などの配偶者または二親等内の親族でないことが含まれています。家族を取締役にすること自体は可能ですが、会社法上の「社外取締役」には当たりません。

Q. 顧問とアドバイザリーボードはどう違いますか?

どちらも会社法上の役員ではなく、契約や会社の任意の取決めで置く助言の仕組みです。一般に、顧問は特定の分野について個別に継続的な助言を受ける形、アドバイザリーボードは複数の外部有識者に経営全般について意見を求める会議体の形をとります。いずれも取締役会での議決権はありません。

Q. 社外取締役の報酬はどのように決めればよいですか?

取締役の報酬は、定款に定めがない場合、株主総会の決議で定めます。金額は、期待する役割や出席の頻度、本人の経験などを踏まえて決めます。税務上は役員給与として扱われるため、定期同額給与などの要件を満たす支給方法にしておくことが大切です。

Q. 社外取締役が責任を問われるのが心配で、引き受けてもらえません。

会社は、業務を執行しない取締役との間で損害賠償責任の上限を定める責任限定契約を結べる旨を定款で定めることができます。役員等の賠償責任に備える保険の活用もあわせて検討し、引き受ける人が安心できる環境を整えることが、人選を進めるうえでも役立ちます。

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  • 社会貢献型事業承継:自社株・経営権・ご家族への配分と、社会貢献の形を一つの設計として検討します。

参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『資産家のためのファミリーガバナンスガイドブック 〜相続・事業承継・資産運用・ファミリーオフィス〜』辻・本郷 税理士法人 ファミリーオフィス事業部、辻・本郷 ファミリーオフィス株式会社、岩崎隼人 編著、東峰書房、2025年1月、P.18-19、P.28、P.43-47
  • 『ファミリービジネス白書 2018年版 ―100年経営とガバナンス―』ファミリービジネス白書企画編集委員会 編、後藤俊夫 監修、白桃書房、2018年5月、P.7、P.132-135
  • 『非公開会社における少数株主対策の実務 会社法から税務上の留意点まで』永吉啓一郎 著、清文社、2020年12月、P.1-10

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。