グループ会社を合併や株式交換で整理する|手法の選び方、税制適格の要件、承継・売却を見据えた整理の順番

二つのビル模型群を木製の橋でつなぐ手元

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オーナー企業では、事業の拡大や節目ごとの判断の積み重ねで、関連会社が少しずつ増えていきます。気づけば、休眠に近い会社、不動産だけを持つ会社、株主が少しずつ違う会社が並び、誰も全体像を説明できない――そうしたグループは珍しくありません。

グループの整理(グループ内再編)とは、合併・株式交換・会社分割・現物分配などの手法を組み合わせて、会社の数と資本関係を目的に合った形に組み替えることです。

結論からいえば、整理は「どの手法を使うか」より先に「整理した後のグループの姿」と「整理の順番」を決めることが重要です。多くのグループ内再編は税制適格要件を満たしやすい一方、株主構成や支配関係が生じた時期によっては、繰越欠損金が使えなくなる、不動産取得税がかかる、少数株主の扱いで手続が止まる、といった問題が起こります。この記事では、手法の選び方と、承継・売却を見据えた整理の順番を整理します。

なぜグループを整理するのか

整理の目的は、主に次の4つです。

  1. 承継しやすくする:後継者が引き継ぐ株式を一本化し、会社ごとに株主がばらばらな状態を解消する
  2. 売却しやすくする:M&Aの対象とする事業と、オーナー側に残す資産を分ける
  3. 管理コストを下げる:決算・申告・登記などの手間や、会社ごとの固定費を減らす
  4. 経営判断を速くする:会社をまたいだ資金・人・資産の配分を一元的に行えるようにする

目的が違えば、ゴールの形も違います。承継が目的なら「持株会社の下に事業会社を並べる」形が、売却が目的なら「売る事業を一つの会社にまとめ、売らない資産を別の会社に移す」形が候補になります。

主な手法とその特徴

グループ内再編で使われる主な手法を、オーナーが比べるべき観点で整理すると次のとおりです。

手法何が起こるか向いている場面主な注意点
合併2つ以上の会社が1つになる会社の数を減らす、休眠会社・赤字会社を整理する繰越欠損金の引継制限、許認可・契約の承継、債権者保護手続
株式交換既存の会社を100%親会社とする親子関係をつくる関連会社を持株会社や中核会社の傘下に入れる少数株主の扱い、親会社株式の割当て、交換比率の算定
株式移転新設の持株会社の下に既存の会社を入れる複数の会社を1つの持株会社の下にまとめる新設会社の評価区分、維持コスト
会社分割事業の一部を他の会社に移す事業と不動産の切り分け、事業の付け替え適格要件(関係の継続)、労働契約の承継、許認可
現物分配100%子会社の資産を親会社に配当で移す孫会社の子会社化、不要資産の移転分配可能額の範囲内、個人株主がいると不適格
株式の売買株式を買い集めて資本関係を変える少数株主からの買取り、持合いの解消買取資金、税務上の時価

持株会社の新設そのものの目的とつくり方は関連記事「持株会社(ホールディングス)をつくる目的」で、会社分割の詳細は「会社分割で事業を切り分けて引き継ぐ」で解説しています。

税制適格の要件と、グループ内再編で注意したい点

グループ内再編は適格になりやすい

法人税法上、合併や分割は原則として資産・負債を時価で移転したものとして扱われますが、税制適格要件を満たせば帳簿価額で移転し、その時点では課税されません。適格要件は、当事者間の関係に応じて次の3つの類型に分かれます(法人税法2条12号の8・12号の11・12号の17ほか、法人税法施行令4条の3)。

  • 完全支配関係(100%)のある会社間:対価として株式以外の資産を交付しないことと、完全支配関係が続く見込みであることが中心です。
  • 支配関係(50%超)のある会社間:これに加えて、従業者のおおむね80%以上の引継ぎや事業の継続の見込みなどが求められます。
  • 共同で事業を行うための再編:さらに事業関連性などの要件が加わります。

オーナー個人とその親族が株式の過半数を持つ会社どうしは、支配関係のある会社間として判定されるのが通常です。そのため、グループ内再編の多くは、一定の要件を満たせば適格になります。

繰越欠損金の「5年」に注意する

注意が必要なのは、赤字会社を含む合併です。適格合併であっても、合併する会社どうしの支配関係が、合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日(または設立の日など)から継続していない場合には、原則として被合併会社の繰越欠損金の引継ぎが制限されます(法人税法57条3項)。合併する側の会社の繰越欠損金の使用や、含み損のある資産の損失の計上にも同様の制限があります(法人税法57条4項、62条の7)。

つまり、最近買収した会社や、最近支配関係ができた会社との合併では、欠損金が引き継げないことがあるということです。共同事業要件などを満たせば制限がかからない場合もありますが、判定は個別の確認が必要です。

少数株主がいる場合

株式交換や合併で少数株主に親会社の株式を交付すると、少数株主がグループの中核会社の株主として残ることになります。親会社が子会社の発行済株式の3分の2以上を直接保有している場合は、少数株主に金銭を交付しても金銭等不交付要件の対象とならない取扱いがあり(法人税法2条12号の8括弧書ほか)、現金を対価とする合併や株式交換で少数株主を整理する方法が検討されることもあります。ただし、少数株主の理解を得ることや、買取価格の妥当性を説明できることが前提です。

税金以外に確認したいこと

  • 会社法上の手続:合併・株式交換・分割は、原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法309条2項12号)。規模の小さい再編では簡易手続(会社法796条2項など)が、90%以上の議決権を持つ親会社との再編では略式手続が使える場合があります。合併や分割では債権者保護手続も必要です。
  • 不動産取得税:合併による不動産の取得は非課税です(地方税法73条の7第2号)。分割は一定の要件を満たす場合に限り非課税、現物分配や売買は同条の非課税の対象として掲げられていません。不動産の多いグループでは、手法によって流通税の負担が大きく変わります。
  • 許認可・契約:合併や分割では、許認可の承継に行政庁の手続が必要な業種や、承継できない業種があります。取引先との契約に組織再編を理由とする解除条項がないかも確認します。
  • 自社株の評価:再編後の各社の資産構成や利益が変わると、相続税評価上の会社区分(株式等保有特定会社・土地保有特定会社・開業後3年未満の会社など)も変わり得ます。

承継・売却を見据えた整理の順番

グループ整理は、一度にすべてを行うより、段階を踏む方が失敗しにくくなります。AEGISが考える基本的な順番は次のとおりです。

段階やること確認したいこと
1. 現状の可視化全社の株主・持株比率・役員・資産・借入れ・許認可を一覧にする名義株、持合い、休眠会社、保証の有無
2. 目標の形を決める承継・売却・管理のどれを優先するかを決め、整理後の資本関係図を描く誰がどの会社の株式を持つか
3. 株主の整理少数株主からの買取り、名義株の整理、持合いの解消買取価格、資金、株主との合意
4. 資本関係の整理株式交換・株式移転で親子関係を整える適格要件、交換比率
5. 資産・事業の付け替え会社分割・現物分配・売買で資産と事業を移す流通税、許認可、欠損金
6. 会社数の削減合併や清算で不要な会社をなくす欠損金の制限、債権者保護

順番を誤ると、たとえば「先に合併してしまい、後から売却対象の事業を切り出すのに分割が必要になる」「株主の整理をしないまま株式交換をして、少数株主が親会社に残る」といった手戻りが生じます。

AEGISの視点

グループ会社が増えるのは、多くの場合、その時々の合理的な判断の結果です。新規事業を別会社にした、不動産を別に持った、取引先の要請で会社を分けた――一つひとつには理由がありました。だからこそ、整理するときには、「なぜその会社があるのか」を一社ずつ確かめるところから始めることが大切だとAEGISは考えています。

そのうえで、整理後のグループの姿を、税金の面だけでなく、誰が経営し、誰が株式を持ち、どの資産をどの会社に置くかという「所有と承継の設計図」として描きます。組織再編の手法は、その設計図を実現するための道具にすぎません。

また、再編には時間がかかります。欠損金の5年の判定のように、時間の経過そのものが条件になる要素もあります。承継や売却の時期が見えてきてから慌てて再編するのではなく、数年単位の計画として進めることが、選択肢を広く保つことにつながります。会社売却の準備をいつから始めるかの全体像は、親記事「会社売却を考えるなら何年前から準備するか」で解説しています。グループ内で個々の資産を移す方法としては、「現物分配で子会社の資産を親会社へ移す」も参考になります。

グループ再編と承継・評価の論点は、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。

まとめ

  • グループ整理は、承継・売却・管理コスト・経営判断のいずれを優先するかで、目指す形が変わります。
  • 合併・株式交換・株式移転・会社分割・現物分配・株式の売買には、それぞれ向いている場面と注意点があります。
  • グループ内再編は税制適格になりやすい一方、支配関係が5年以内に生じた会社との合併などでは繰越欠損金の制限に注意が必要です。
  • 不動産取得税・許認可・少数株主・自社株の評価など、税金以外の確認事項も手法の選択を左右します。
  • 現状の可視化 → 目標の形 → 株主の整理 → 資本関係 → 資産・事業の付け替え → 会社数の削減、という順番で進めると手戻りが少なくなります。具体的な進め方は個別の事情によって異なります。

よくある質問

Q. 休眠会社は合併で整理するのと清算するのと、どちらがよいですか?

休眠会社に資産や繰越欠損金がほとんどなければ、清算の方が手続を単純にできる場合があります。一方、不動産を持っている場合は、合併なら不動産取得税が非課税となるため、合併が有利になることがあります。資産の内容、欠損金の有無、手続の期間を比べて判断します。

Q. 赤字の子会社を合併すれば、その欠損金を使えますか?

適格合併であれば、被合併会社の繰越欠損金を引き継げるのが原則です。ただし、支配関係が合併の日の属する事業年度開始の日の5年前から継続していない場合などは、引継ぎが制限されます。共同事業要件などを満たす場合の例外もあるため、個別の確認が必要です。

Q. 株式交換と株式移転は何が違いますか?

株式交換は既存の会社を親会社にして他の会社を100%子会社にする手続、株式移転は新しく設立する会社を親会社にする手続です。既存の中核会社や資産管理会社を親会社にしたい場合は株式交換、新しい持株会社をつくりたい場合は株式移転が候補になります。

Q. 兄弟会社を親子会社に組み替えることはできますか?

株式交換により、一方の会社を他方の100%子会社にすることができます。オーナー個人とその親族が両社の株式を持っている場合は、グループ内の再編として税制適格要件を満たしやすくなりますが、交換比率の算定や、組み替え後の株価への影響を確認しておく必要があります。

Q. グループ整理にはどのくらいの期間がかかりますか?

手法と会社の数によりますが、債権者保護手続には1か月以上の期間が必要で、株主の整理や価格の算定を含めると、1年以上の計画になることも珍しくありません。承継や売却の時期から逆算して、早めに着手することが望まれます。

関連するAEGISのソリューション

この記事のテーマに関連する、AEGISのソリューションです。

  • M&A:会社売却の方針、取引条件、税引後の受取額、売却後の資産管理までを検討します。
  • 資産管理会社:資産管理会社の設立や既存法人の見直しについて、資金移動・税負担・維持費・株式の承継まで確認します。
  • 事業オーナーの方へ:会社と株式、ご家族の承継を一つの計画として整理する、AEGISの支援の流れをまとめています。
  • 社会貢献型事業承継:自社株・経営権・ご家族への配分と、社会貢献の形を一つの設計として検討します。

参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『税務からみたM&A・組織再編成のストラクチャー選択』佐藤信祐 著、中央経済社、2022年、第5章(P.257-278)
  • 『新版〔目的別〕組織再編の最適スキーム 法務・会計・税務』貝沼彩・北山雅一・清水博崇・齊藤修一 著、清文社、2020年、第3章(P.162-188)
  • 『令和7年版 図解組織再編税制』中村慈美 著、大蔵財務協会、2025年、第8章(P.501-518)

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。