会社分割で事業を切り分けて引き継ぐ|分社型・分割型の違い、手続、適格要件と課税、分割後の株価まで

高層ビルを望む会議卓に置かれた、明るい色と濃い色の木製キューブ2つ

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会社分割とは、会社が営む事業に関する権利義務の全部または一部を、他の会社(既存の会社または新しく設立する会社)に包括的に引き継がせる、会社法上の手続です。

複数の事業を持つ会社では、「この事業は長男に、あの事業は次男に」「本業は買い手に譲り、不動産は家族に残す」といった形で、事業を切り分けて引き継ぎたいという場面があります。会社分割は、こうした切り分けを、契約や従業員を個別に移し替えることなく行える点に特徴があります。

結論からいえば、会社分割は「グループ内での切り分け」や「親族への承継」では税制適格になりやすく、「切り分けた後に第三者へ売る」場面では非適格になりやすいという性質があります。どの順番で、どの形の分割を使うかによって、税負担も株価も大きく変わります。この記事では、その判断の材料を整理します。

会社分割の4つの形

会社分割は、受け皿となる会社が既存か新設か、分割の対価となる株式を誰が持つかによって、次の4つに分けられます。

  • 吸収分割/新設分割:事業を既存の会社に引き継がせるのが吸収分割、分割により新しく設立する会社に引き継がせるのが新設分割です(会社法2条29号・30号)。
  • 分社型分割/分割型分割:対価の株式を分割した会社自身が持つのが分社型分割(子会社をつくる形)、対価の株式を分割した会社の株主に交付するのが分割型分割(兄弟会社をつくる形)です(法人税法2条12号の9・12号の10)。
形分割後の関係主な使い道
新設分社型分割元の会社の下に100%子会社ができる持株会社化、事業ごとの子会社化、子会社株式の売却
新設分割型分割同じ株主が持つ兄弟会社ができる事業ごとに別々の後継者へ承継、不動産と事業の分離
吸収分社型分割既存の会社へ事業を移し、その株式を元の会社が持つグループ内の事業の付け替え
吸収分割型分割既存の会社へ事業を移し、その株式を株主が持つ兄弟会社間の事業の付け替え

会社法上の手続

会社分割の手続は、合併とほぼ同じ骨格を持っています。

  1. 分割契約の締結(吸収分割)または分割計画の作成(新設分割)
  2. 株主総会の特別決議による承認(会社法783条1項、804条1項、309条2項12号)。ただし、移す資産の帳簿価額が分割する会社の総資産額の5分の1以下の場合など、株主総会を省略できる簡易分割の定めがあります(会社法784条2項、805条)。
  3. 事前開示・事後開示
  4. 債権者保護手続:官報公告と知れている債権者への個別催告を行い、異議を述べる機会を与えます(会社法789条、799条、810条)。分社型分割では、分割後も分割した会社に請求できる債権者は対象外とされるため、債務を移さない場合などには手続が不要になることがあります。分割型分割では原則として必要です。
  5. 労働契約の承継手続:「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」に基づき、対象となる労働者への通知などを行います(同法2条)。会社分割では、個々の労働者の同意がなくても労働契約が承継されるため、その代わりに通知や異議申出の手続が定められています。
  6. 登記

なお、分割する会社が、引き継がれない債務の債権者を害することを知って分割した場合、その債権者は承継した会社に対して債務の履行を請求できるとする規定もあります(会社法759条4項ほか)。財務状態の悪い会社で「良い事業だけを移す」ような分割には、法的な制約がある点に注意が必要です。

税制適格要件と課税

適格分割になれば簿価で移る

法人税法上、会社分割は原則として資産・負債を時価で移転したものとして扱い、分割した会社で含み損益が課税されます(法人税法62条1項)。ただし、税制適格要件を満たす「適格分割」であれば、帳簿価額で移転したものとして扱われ、その時点では課税されません。

適格要件は、分割前後の資本関係によって3つの類型があります(法人税法2条12号の11、法人税法施行令4条の3)。

類型主な要件
完全支配関係(100%)のある会社間対価として株式以外の資産を交付しないこと、分割型分割では株式を持株割合に応じて交付すること、分割後も完全支配関係が続く見込みであること
支配関係(50%超)のある会社間上記に加え、分割事業の主要な資産・負債の移転、分割事業の従業者のおおむね80%以上の引継ぎ、分割事業の継続の見込み
共同で事業を行うための分割上記に加え、事業関連性、事業規模または特定役員の引継ぎ、株式の継続保有などの要件

オーナーの株主構成で判定する場合、オーナー個人と親族の持分を合わせて完全支配関係・支配関係を判断します。

「分割後に売る」と非適格になりやすい

適格要件には「分割後も関係が続く見込み」が含まれます。そのため、分割した直後に、切り出した会社の株式を第三者に売却することが予定されている場合は、完全支配関係や支配関係の継続が見込まれず、非適格分割になりやすくなります。非適格分割では、分割した会社で移転資産の含み益に課税され、分割型分割の場合には株主にみなし配当が生じることもあります(法人税法24条1項2号)。

M&Aで一部の事業だけを渡す場合は、「切り出した会社を売る」のか「残した会社を売る」のか、あるいは分割ではなく事業譲渡にするのかで、税負担が大きく変わります。株式譲渡と事業譲渡の比較は、関連記事「株式譲渡と事業譲渡の比較ポイント」で解説しています。

流通税

不動産を移す分割では、登録免許税がかかります。不動産取得税については、分割事業の主要な資産・負債の移転、事業の継続、従業者のおおむね80%以上の引継ぎなどの要件を満たす分割による取得は非課税とされています(地方税法73条の7第2号、同法施行令37条の14)。要件を満たさない場合は課税されるため、不動産の多い会社では事前の確認が欠かせません。

許認可・契約の引継ぎ

会社分割は包括承継のため、取引先との契約や雇用契約は原則として承継会社に引き継がれます。ただし、契約に「会社分割などの組織再編があれば相手方が解除できる」といった条項(いわゆるチェンジ・オブ・コントロール条項など)がある場合は、相手方との調整が必要です。

許認可は、業法ごとに扱いが異なります。

  • 分割により当然に承継されるもの
  • 事前に行政庁の認可などを受けることで承継できるもの(たとえば建設業法17条の2は、分割により建設業の全部を承継させる場合の事前認可の制度を定めています)
  • 承継できず、新たな取得が必要なもの

許認可が承継できない事業を切り出すと、新しい会社で許認可を取り直すまで事業ができないことがあります。どの事業を「移す側」にし、どの事業を「残す側」にするかは、許認可の扱いから逆算して決めることが現実的です。

分割後の株価への影響

会社分割の後は、元の会社と新しい会社の株式をそれぞれ評価することになります。相続税・贈与税の評価では、次の点に注意が必要です。

  • 新設会社は開業後3年未満の会社として、原則として純資産価額方式で評価されます(財産評価基本通達189(4))。
  • 不動産だけを残した会社は、総資産に占める土地等の割合が高くなり、土地保有特定会社に該当する可能性があります(同通達189(3))。
  • 分社型分割で子会社株式を持つことになった会社は、総資産に占める株式等の割合によって株式等保有特定会社に該当する可能性があります(同通達189(2))。

分割は株価を「下げる」ための手段ではなく、事業ごとの価値を「見えるようにする」手続だと考えた方が、判断を誤りにくくなります。

実務上注意したいポイント

  • 分割の目的と、分割後の株主構成を先に決める:誰がどの会社の株式を持つのかが決まらないと、分社型か分割型かも決まりません。
  • スケジュールに余裕を持つ:債権者保護手続には1か月以上の異議申述期間が必要です。官報掲載や労働者への通知の期限から逆算します。
  • 不動産の扱いを決める:会社分割で事業と不動産を分ける場合、分割後に事業会社が不動産会社から借りる条件(賃料・期間)も同時に決めておきます。会社売却前のオーナー個人所有の不動産の整理は「会社売却の前に整理したいオーナー個人所有の事業用不動産」も参考になります。

  • 金融機関・取引先への説明:借入れや保証をどちらの会社に残すかは、債権者保護手続とあわせて金融機関と調整が必要です。

AEGISの視点

会社分割は、事業を「切る」手続であると同時に、家族や関係者との関係を「分ける」手続でもあります。

AEGISは、会社分割を検討するとき、税制適格になるかどうかより先に、「分けた後のそれぞれの会社が、単独で続いていけるか」を確かめることが大切だと考えています。不動産だけを持つ会社は安定しているように見えても、修繕や借入れの返済を誰が担うのかが曖昧なままでは続きません。事業だけを持つ会社は、賃料負担が増えて利益が圧迫されることもあります。

また、兄弟それぞれに会社を渡す分割型分割は、相続のときの公平性の議論を先取りするものでもあります。分割の前に、各社の価値と将来の見通しを家族で共有しておくことが、後の争いを防ぐ一番の準備になります。売却を視野に入れるなら、いつから何を準備すべきかの全体像は親記事「会社売却を考えるなら何年前から準備するか」で、グループ全体の整理の順番は「グループ会社を合併や株式交換で整理する」で解説しています。

会社分割と承継・評価の論点は、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。

まとめ

  • 会社分割は、事業に関する権利義務を包括的に他の会社へ引き継がせる手続で、分社型・分割型、吸収・新設の組合せで4つの形があります。
  • 手続には、株主総会の特別決議、債権者保護手続、労働契約の承継手続、登記などが必要です。
  • 適格分割なら簿価で移転しますが、分割後に第三者へ売却する予定があると、関係継続の見込みがなく非適格になりやすくなります。
  • 許認可は業法ごとに承継の可否が異なり、どちらの会社に事業を残すかの判断材料になります。
  • 分割後は各社の評価区分(開業後3年未満、土地保有特定会社、株式等保有特定会社)が変わり得ます。具体的な適否は個別事情によって異なります。

よくある質問

Q. 会社分割と事業譲渡は何が違いますか?

会社分割は権利義務を包括的に引き継ぐため、契約や雇用を個別に移し替える必要が原則としてありません。事業譲渡は個々の資産・契約を選んで移すため、取引先や従業員の個別の同意が必要になります。一方、事業譲渡は簿外債務を引き継ぎにくいという面があり、目的によって使い分けます。

Q. 兄弟それぞれに別の事業を承継させるには、どの分割を使いますか?

一般的には新設分割型分割で兄弟会社をつくり、その後、各会社の株式をそれぞれの後継者に移す方法が検討されます。分割の時点で株主が持株割合に応じて株式を受け取り、その後の贈与や売買で整理します。分割後の株式の移転の予定が適格要件に影響することがあるため、順番の設計が重要です。

Q. 分割で切り出した会社の株式を売却するとどうなりますか?

分割後に支配関係が続かない見込みとなるため、非適格分割となる可能性が高くなります。その場合、分割した会社で移転資産の含み益に課税されます。売却を予定している場合は、事業譲渡や、残す側の会社を売る設計なども含めて比較します。

Q. 会社分割で従業員を移すには、本人の同意が必要ですか?

会社分割では、分割契約・分割計画に定めた労働契約は、原則として本人の同意なく承継会社に引き継がれます。その代わり、労働契約承継法に基づく通知や、一定の場合の異議申出の手続が定められています。

Q. 会社分割の手続には、どのくらいの期間がかかりますか?

債権者保護手続には1か月以上の異議申述期間が必要で、準備や官報掲載の期間を含めると数か月を見込むのが一般的です。許認可の承継に行政庁の手続が必要な場合は、さらに期間を要することがあります。

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  • M&A:会社売却の方針、取引条件、税引後の受取額、売却後の資産管理までを検討します。
  • 事業承継:後継者、経営権、株式、資金、ご家族の意向を確認し、贈与・相続・売買・M&Aなどを比較しながら承継計画を検討します。
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参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『これだけ!組織再編&事業承継税制(第3版)』佐藤信祐・長谷川太郎 著、中央経済社、2022年、第1編第2章(P.75-112)
  • 『中小企業M&AのFA業務マニュアル』渡部潔 著、中央経済社、2025年、第1部第5章(P.59-73)

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。