寄附金控除と税額控除はどちらを選ぶか|認定NPO・公益法人への寄附で税負担の差を比べる考え方

積み重ねた資料とファイルを前に、ペンで書き込む手元

執筆者:

カテゴリ:

,

認定NPO法人や、一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人などに個人が寄附をした場合、所得税では「寄附金控除(所得控除)」と「税額控除」のどちらか有利な方を選ぶことができます。

一般的には、所得税の税率が40%未満の方は税額控除の方が有利になりやすく、税率が45%の方は寄附金控除の方が有利になりやすいという目安があります。ただし、税額控除には「所得税額の25%」という上限があり、寄附額が大きい場合や、他の寄附と組み合わせる場合には結論が変わることがあります。

この記事では、生前に個人として寄附をする場合を前提に、2つの制度の仕組みと比べ方、住民税やふるさと納税との違い、株式などの財産で寄附する場合の入口までを整理します。

寄附金控除と税額控除の仕組み

寄附金控除(所得控除)

寄附金控除は、国や地方公共団体、公益社団法人・公益財団法人、認定NPO法人などに対する「特定寄附金」を支出したときに、所得から差し引く制度です。控除額は次のとおり計算します(国税庁タックスアンサーNo.1150)。

  • 控除額 =(その年の特定寄附金の合計額 と 総所得金額等の40% のいずれか低い金額)− 2,000円

所得から差し引くため、実際に軽くなる税額は控除額 × その人に適用される所得税率になります。税率の高い人ほど効果が大きくなる仕組みです。

税額控除

税額控除は、計算した控除額を所得税額から直接差し引く制度です。対象となるのは、政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金、公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のものに限られます。

認定NPO法人等や、要件を満たす公益社団法人等への寄附の税額控除額は、基本的に次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.1263、No.1266)。

  • 控除額 =(その年の対象寄附金の合計額 − 2,000円)× 40%
  • 対象寄附金の合計額は、総所得金額等の40%が限度
  • 控除額は、その年の所得税額の25%が限度(認定NPO法人等と公益社団法人等の税額控除を合わせて判定)

税率に関係なく一律に40%が差し引かれるため、所得税率が40%未満の人にとっては、同じ寄附でも税額控除の方が負担の軽減額が大きくなります。

2つの制度の比較

項目寄附金控除(所得控除)税額控除
対象特定寄附金全般(国・地方公共団体、公益法人等、認定NPO法人等など)政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等への寄附金、要件を満たす公益社団法人等への寄附金など
差し引く対象所得所得税額
計算(寄附金 − 2,000円)を所得から控除(寄附金 − 2,000円)× 40%を税額から控除
寄附金の上限総所得金額等の40%総所得金額等の40%
控除額の上限—所得税額の25%
効果が大きい人所得税率が高い人所得税率が40%未満の人、小口の寄附
主な添付書類寄附先の受領証寄附先の受領証明書と、税額控除の対象法人であることの証明書類の写し

※2,000円や40%の上限は、他の寄附金控除・税額控除がある場合に調整されます。詳しい計算は国税庁の案内を確認してください。なお、税額控除の対象となる寄附金は「寄附金控除の適用を受けるものを除く」と定められており、同じ年に寄附金控除の対象とする寄附金と税額控除の対象とする寄附金が併存することも条文上想定されています(租税特別措置法第41条の18の3第1項)。

どちらを選ぶと有利か:比べ方の考え方

税率による分かれ目

所得控除の効果は「寄附金 − 2,000円」に所得税率を掛けた金額、税額控除の効果は「寄附金 − 2,000円」に40%を掛けた金額です。したがって、単純化すると次のように比べられます。

  • 所得税率が5%〜33%の人:税額控除の方が有利になりやすい
  • 所得税率が40%の人:ほぼ同じ(復興特別所得税などを含めると細かな差が生じます)
  • 所得税率が45%の人:寄附金控除の方が有利になりやすい

国税庁の税率表では、課税される所得金額が1,800万円以上4,000万円未満で40%、4,000万円以上で45%とされています(タックスアンサーNo.2260)。

計算例で確かめる

次の例は、仕組みを理解するための単純化した計算です(復興特別所得税・住民税は考慮せず、寄附金が総所得金額等の40%以内に収まり、他の寄附はないものとします)。

前提寄附金控除の場合税額控除の場合有利な方
課税所得1,000万円(税率33%)、寄附50万円49.8万円 × 33% = 約16.4万円の軽減49.8万円 × 40% = 約19.9万円の軽減(所得税額の25%以内)税額控除
課税所得5,000万円(税率45%)、寄附500万円499.8万円 × 45% = 約224.9万円の軽減499.8万円 × 40% = 約199.9万円の軽減(所得税額の25%以内)寄附金控除

※実際の有利不利は、所得の構成や他の控除、寄附の時期と金額によって変わります。

上限に当たるときは結論が変わる

税率だけでは判断できないのが、上限に当たる場合です。

  • 所得税額の25%の上限:寄附額が所得税額に比べて大きいと、税額控除の効果は上限で頭打ちになります。たとえば所得税額が200万円の人は、税額控除で差し引けるのは50万円までです。
  • 総所得金額等の40%の上限:寄附金控除・税額控除のいずれも、対象となる寄附金の額は総所得金額等の40%が限度です。大口の寄附を1年に集中させると、上限を超えた部分は控除の対象になりません。

大きな金額を寄附する場合は、寄附の年を分ける、寄附先の種類を組み合わせるといった工夫で、上限の中に収めることも検討に値します。

税額控除を選ぶ前に確認したいこと

寄附先が税額控除の対象か

公益社団法人・公益財団法人であれば、どこへの寄附でも税額控除を選べるわけではありません。税額控除の対象となるのは、一定数以上の寄附者から寄附を受けているなど、広く市民から支援を受けていることの要件を満たし、所轄庁等の証明を受けた法人に限られます。寄附の前に、寄附先が税額控除の対象であるかを確認しておきましょう。

必要な書類と確定申告

税額控除を受けるには、寄附先から交付を受けた受領証明書に加え、その法人が税額控除の対象であることを所轄庁等が証明した書類の写しが必要になります。いずれの控除も、原則として確定申告で適用を受けます。給与所得者で普段は確定申告をしない方も、寄附の控除を受けるためには申告が必要です。

住民税とふるさと納税との違い

住民税は「自治体が指定した寄附」が中心

ここまでの寄附金控除・税額控除は所得税の制度です。個人住民税では、所得から差し引く寄附金控除はなく、都道府県や市区町村が条例で指定した寄附金などについて、住民税額から一定割合を差し引く仕組みが設けられています。具体的には、対象となる寄附金(総所得金額等の30%が限度)のうち2,000円を超える部分について、道府県民税は4%、市町村民税は6%(指定都市に住所がある場合はそれぞれ2%、8%)を税額から差し引きます(地方税法第37条の2、第314条の7)。寄附先が住所地の自治体の条例で指定されているかどうかで、住民税の軽減の有無が変わります。

ふるさと納税は「自治体への寄附」

ふるさと納税は、都道府県や市区町村への寄附です。総務省の説明によれば、所得税の寄附金控除に加え、住民税の基本分と特例分の控除があり、一定の上限の範囲内であれば自己負担が2,000円となる仕組みになっています。確定申告が不要な給与所得者で寄附先が5団体以内の場合には、ワンストップ特例も使えます。

一方、認定NPO法人や公益法人への寄附は、住民税の特例分のような仕組みがないため、ふるさと納税のように「自己負担2,000円」になるわけではありません。ふるさと納税は返礼品を含めた家計の判断、公益法人・NPOへの寄附は活動内容への共感と税負担の両面から考える判断と、性格が異なると考えるとよいでしょう。ふるさと納税の上限や制度の見直しについては、関連記事「ふるさと納税の見直しで変わったこと」で扱っています。

株式や不動産で寄附する場合の入口

ここまでは金銭による寄附を前提にしました。値上がりした株式や不動産で寄附をする場合は、別の論点が加わります。

  • みなし譲渡課税:個人が法人に財産を寄附すると、原則として時価で譲渡したものとみなされ、値上がり益に所得税がかかります。
  • 非課税の特例:公益法人等への寄附で、国税庁長官の承認を受けるなど一定の要件を満たせば、この譲渡所得等を非課税とする特例があります(租税特別措置法第40条)。承認申請には期限があり、寄附後の財産の管理方法などにも要件があります。
  • 寄附金控除の対象額:非課税の特例の適用を受けた場合、寄附金控除や税額控除の対象となる寄附金の額からは、非課税とされた譲渡所得等の金額に相当する部分が除かれます(租税特別措置法第40条第21項)。

財産による寄附は、寄附金控除・税額控除の選択とあわせて、譲渡所得の課税と非課税特例の適用可否を一体で検討する必要があります。非上場株式を財団に寄附する場合の確認点は、関連記事「非上場株式を財団に寄附する前に決めること」で解説しています。

また、亡くなった後に遺言で財産を寄附する方法は、生前の寄附とは税制の扱いが異なります。関連記事「遺贈寄附とは何か、遺言で財産の一部を社会に遺す方法」をご覧ください。

実務上注意したいポイント

  • 寄附の前に「控除の種類」を確認する:同じ「公益財団法人」でも、税額控除の対象かどうかは法人ごとに異なります。寄附先のWebサイトや問い合わせで確認しておきましょう。
  • 受領証は年ごとに整理する:控除は寄附を支払った年分で適用されます。年末の寄附は、受領証の日付と申告年分を確認しておくと安心です。
  • 大口の寄附は複数年で計画する:40%・25%の上限を踏まえ、1年に集中させるか分けるかを試算してから決めることが望まれます。
  • 個人で寄附するか、会社で寄附するかを分けて考える:会社が寄附をする場合は、法人税の損金算入の枠で考えることになり、個人の寄附金控除・税額控除とは仕組みが異なります。誰の名義で寄附するかは、目的と資金の出どころから整理しましょう。
  • 継続的な寄附は家計の計画に組み込む:税の軽減は寄附額の一部にとどまります。寄附は、税負担を減らす手段ではなく、手元資金の使い道の一つとして計画することが大切です。

AEGISの視点

寄附の税制は、「どちらの控除が得か」という比較で語られがちです。もちろん、同じ寄附でも選び方によって税負担が変わる以上、比較は欠かせません。しかしAEGISは、寄附の税制を「社会に届ける金額を、無理なく続けるための仕組み」として捉えています。

高所得者や事業オーナーにとって、寄附は一度きりの行為ではなく、毎年の家計、会社の配当や役員報酬、将来の財団設立や遺贈寄附へとつながる長い取組みになり得ます。今年は金銭で認定NPO法人に寄附し、将来は株式の寄附や財団の設立を検討する、といった段階的な計画の中で、所得控除と税額控除の選択や、上限への収め方を考えることで、寄附はより持続的なものになります。

寄附の税制を、所得税の申告という一年単位の視点だけでなく、資産と承継の全体像の中に位置付けること。それが、寄附を続ける人にとっての本当の「有利」につながるとAEGISは考えています。財団を通じた社会貢献の全体像は、Pillar記事「社会貢献を続ける財団をどう設計するか」で解説しています。

寄附や財団に関わる資産税務の論点については、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。

まとめ

  • 認定NPO法人等や、要件を満たす公益社団法人等への寄附は、所得税で「寄附金控除(所得控除)」と「税額控除」のいずれか有利な方を選べます。
  • 寄附金控除は(寄附金 − 2,000円)を所得から、税額控除は(寄附金 − 2,000円)× 40%を税額から差し引きます。
  • 目安として、所得税率40%未満なら税額控除、45%なら寄附金控除が有利になりやすい一方、税額控除には所得税額の25%、寄附金には総所得金額等の40%の上限があります。
  • 住民税は自治体が条例で指定した寄附金などが対象で、ふるさと納税とは仕組みが異なります。
  • 株式や不動産による寄附は、みなし譲渡課税と非課税特例をあわせて検討が必要です。具体的な有利不利は、所得や寄附の状況によって異なります。

よくある質問

Q. 公益財団法人への寄附なら、必ず税額控除を選べますか?

選べるとは限りません。税額控除の対象となるのは、広く市民から寄附を受けていることなどの要件を満たし、所轄庁等の証明を受けた法人への寄附に限られます。対象でない公益法人への寄附は、寄附金控除(所得控除)の対象になります。寄附の前に寄附先に確認しておきましょう。

Q. 所得税率が40%の場合は、どちらを選んでも同じですか?

単純化するとほぼ同じになりますが、復興特別所得税、寄附によって課税所得が下の税率区分にかかるかどうか、税額控除の25%の上限などによって、細かな差が生じます。金額が大きい場合は、申告の前に両方の方法で試算して比べることをおすすめします。

Q. 1年に大きな金額を寄附しても、全額が控除の対象になりますか?

なりません。寄附金控除・税額控除のいずれも、対象となる寄附金はその年の総所得金額等の40%が限度です。さらに税額控除は、控除額が所得税額の25%までに制限されます。大口の寄附は、複数年に分けることも含めて計画するとよいでしょう。

Q. ふるさと納税と同じように、自己負担2,000円で寄附できますか?

認定NPO法人や公益法人への寄附は、ふるさと納税のような住民税の特例分の控除がないため、自己負担が2,000円になる仕組みではありません。税の軽減は、所得税の控除と、条例で指定されている場合の住民税の控除の範囲にとどまります。

Q. 給与所得者でも、寄附の控除を受けるには確定申告が必要ですか?

所得税の寄附金控除・税額控除は、原則として確定申告で適用を受けます。年末調整では適用されないため、給与所得者の方も、受領証明書などを添えて確定申告を行う必要があります。ふるさと納税のワンストップ特例は、自治体への寄附に限った仕組みです。

関連するAEGISのソリューション

この記事のテーマに関連する、AEGISのソリューションです。

  • 社会貢献を軸にした事業承継:財団活用や非上場株式の寄附の適合性を検討し、経営権・配当・財団運営・税務・実行後の管理を整理します。
  • 税務顧問と経営管理:税務申告・会計・納税予測・資金繰りをつなぎ、経営と家計の判断を支えます。
  • 高所得者の方へ:所得と資産の両面から、税負担と資産形成を整理する支援をまとめています。
  • 事業オーナーの方へ:会社と株式、ご家族の承継を一つの計画として整理する、AEGISの支援の流れをまとめています。
  • 不動産の最適保有設計(POD):個人・法人等の取得形態と、税引後の手残り・融資・出口を、物件の購入前に設計します。
  • 社会貢献型事業承継:自社株・経営権・ご家族への配分と、社会貢献の形を一つの設計として検討します。

参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『公益法人・一般法人のQ&A 運営・会計・税務(五訂版)』稲葉威雄・鳥飼重和・中田ちず子 監修、大蔵財務協会
  • 『令和7年4月施行対応 フローでわかる 一般/公益 社団・財団法人運営ガイドブック』富川昌之 著、新日本法規出版

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。