公益法人のガバナンス改正で理事会はどう変わったか|外部理事・外部監事、理事と監事の親族関係、情報開示の拡充とオーナー一族の関わり方

落ち着いた会議室で7人の役員が会議卓を囲んで話し合う様子

令和6年に成立した公益法人認定法の改正(令和7年4月1日施行)で、公益社団法人・公益財団法人の運営体制に新しいルールが加わりました。財務規律が柔軟になった一方で、その裏側として「自律的なガバナンスの充実」と「透明性の向上」が求められるようになっています。

結論として、公益法人に求められるようになった主な事項は次のとおりです。

  • 外部理事を1人以上置くこと(収益と費用・損失がいずれも3,000万円未満の小規模法人を除く)
  • 外部監事を1人以上置くこと(小規模法人の適用除外はなし)
  • 理事と監事の間に、親族関係などの特別利害関係がないこと
  • 会計監査人の設置が必要な法人の範囲の拡大(収益・費用損失は100億円以上、負債は50億円以上のいずれか)
  • 財産目録などの行政庁での公表、役員ごとの報酬額や2,000万円を超える報酬の理由など、情報開示の拡充

オーナーやその家族が設立・運営に関わる公益財団法人では、「親子で理事と監事を務める」「設立者が理事長として長く運営する」といった体制が見直しの対象になりえます。この記事では、改正の内容と、一族が関与する法人で確認したい点を整理します。

なぜガバナンスの規律が強化されたのか

改正の柱は、①財務規律の柔軟化・明確化、②行政手続の簡素化・合理化、③自律的なガバナンスの充実と透明性の向上、の3つです。収支相償の見直しなどで法人の裁量が広がった分、法人が自ら規律を保ち、外部に説明できる体制を持つことが求められるようになりました。

改正法では、公益法人の一般的な責務として、公益目的事業の質の向上を図るため、運営体制の充実と、財務情報の開示など運営の透明性の向上に努めることが明記されました(公益法人認定法3条の2)。これ自体は努力義務ですが、以下の具体的なルールの背景になっています。

財務規律の改正については、関連記事「公益法人の財務規律をオーナー目線で読む」で解説しています。

改正前と改正後の比較

内閣府の説明資料と認定法の条文をもとに、AEGISで主な変更点を整理すると次のとおりです。

項目改正前改正後(令和7年4月1日施行)
理事・監事の親族等の割合各理事・各監事で、特別利害関係者が3分の1を超えないこと同左(継続)
外部理事定めなし1人以上(小規模法人は適用除外)
外部監事定めなし1人以上(適用除外なし)
理事と監事の関係定めなし理事と監事の間に特別利害関係がないこと
会計監査人の設置収益・費用損失1,000億円以上または負債50億円以上収益・費用損失100億円以上または負債50億円以上
財産目録等請求があれば行政庁・法人で閲覧行政庁で公表(範囲も拡大)
役員報酬の開示報酬規程と総額理事・監事等ごとの総額、2,000万円超の報酬の額と必要性を追加
事業報告一般法人法上の記載事項公益目的事業の実施状況、運営体制充実の取組を追加

外部理事・外部監事

外部理事の要件

外部理事は、理事会の運営が内輪の者だけで行われ、法人が私物化されることを防ぐために導入されました(認定法5条15号)。次のすべてを満たす人が外部理事に当たります。

  • その法人や子法人の業務執行理事・使用人でない
  • 就任前10年間、その法人や子法人の業務執行理事・使用人でなかった
  • 公益社団法人では社員でない(社員が法人なら、その役員・使用人でない)
  • 公益財団法人では設立者でない(設立者が法人なら、その法人や子法人の役員・使用人でない)

ここで重要なのは、代表理事は業務執行理事に当たるため、外部理事にはなれないという点です。外部理事として選任した人が、のちに代表理事や業務執行理事として業務を執行すると、外部理事の要件を欠くことになります。

適用除外は、最終事業年度の収益の額と費用・損失の額がいずれも3,000万円未満の法人です(認定法施行令7条)。事業の拡大で基準を超えると見込まれる場合は、あらかじめ外部理事を選任しておくことが望まれます。

外部監事の要件

外部監事は、就任前10年間その法人や子法人の理事・使用人でなかった人などで、社団では社員、財団では設立者に関する要件も同様に定められています(認定法5条16号)。外部理事と異なり、小規模法人の適用除外はありません。監事が2人以上いる場合は、そのうち1人以上が外部監事であれば足ります。

経過措置

外部理事・外部監事の規定は、改正法の施行日に在任していたすべての理事(監事)の任期が満了する日の翌日から適用されます。すでに改選期を迎えた法人では、適用が始まっている可能性があります。準備を進めても人材の確保が間に合わない場合の行政庁の対応についてはガイドラインで考え方が示されていますが、早めの対応が望まれます。

理事と監事の特別利害関係の排除

改正前から、各理事について、特別利害関係にある理事の合計数が理事総数の3分の1を超えないこと(監事も同様)が求められていました(認定法5条10号)。改正で、これに加えて各理事が監事と特別利害関係を有しないことが求められるようになりました(同条12号)。

特別利害関係には、配偶者、三親等以内の親族、事実婚の関係、使用人、生計を一にする人などが含まれます。したがって、親子や夫婦が理事と監事に同時に就くことはできません。オーナーが理事長、その子が監事といった体制をとっている法人では、改選期に合わせて見直しが必要です。

会計監査人の設置範囲の拡大

会計監査人を置くことが必要な法人の基準が、最終事業年度の収益の額100億円以上、費用・損失の額100億円以上、負債の額50億円以上のいずれかに該当する場合へと引き下げられました(認定法5条13号、同法施行令6条)。会計監査人を設置すると、キャッシュ・フロー計算書の作成など、会計面の対応も変わります。オーナー家の財団で規模の大きいものは該当の有無を確認しておきたいところです。

情報開示の拡充

財産目録等の公表

令和7年4月1日以降、行政庁に提出された財産目録等に当たる書類は、行政庁で公表されるようになりました。事業計画や事業報告の時点だけでなく、事業の変更時などに提出された書類も含まれます。

役員報酬・海外送金

事業報告時の開示として、理事・監事等ごとの報酬等の総額、報酬が2,000万円を超える役員についてその額と必要性、海外送金の有無とテロ資金供与などのリスク軽減策の有無が加わりました(令和6年度事業の事業報告から)。

関連当事者との取引

新しい公益法人会計基準では、注記の対象となる「関連当事者」の範囲が、特別の利益を与えてはならない法人関係者に合わせて広げられました。たとえば、法人の役員・評議員とその近親者が議決権の過半数を持つ会社も関連当事者に含まれます。オーナー一族の会社と財団の間に取引(賃貸借、業務委託、寄附の受入れなど)がある場合、一定の重要性を持つものは財務諸表への注記が必要になります。

事業報告の記載事項

令和8年4月以降に提出する事業報告(令和7年度分)から、公益目的事業の実施状況と、運営体制の充実を図るための取組の記載が必要になりました。内閣府の資料では、外部理事・監事にどのような人を選んだか、外部役員の役割を果たせるようどう情報提供したか、評議員の選任方法を工夫しているかといった記載例が示されています。

オーナー一族が関与する財団で確認したいこと

自社株や個人資産を拠出して公益財団法人を設立した場合、設立者や一族が理事・評議員として運営に関わることは自然なことです。改正後は、その関わり方を次の観点で点検しておくことをおすすめします。AEGISの整理は次のとおりです。

確認項目確認の視点
理事の構成一族と使用人などの特別利害関係者が理事総数の3分の1を超えていないか。外部理事が1人以上いるか
監事の構成理事の親族等が監事になっていないか。外部監事が1人以上いるか
代表理事外部理事を代表理事・業務執行理事にしていないか
評議員会理事の選任・解任を担う評議員が、一族の影響だけで決まる仕組みになっていないか
一族の会社との取引賃貸借・業務委託などの取引が関連当事者取引として把握され、条件の合理性を説明できるか
役員報酬支給基準が定められ、個別の報酬額が開示されても説明できる水準か
自社株の議決権財団が保有する自社株の議決権行使の方針が、理事会で説明可能な形になっているか

財団が保有する株式の扱いや、非上場株式を寄附するときの論点は、関連記事「非上場株式を財団に寄附する前に決めること」で整理しています。

なお、これらは公益認定の基準や公益法人の義務です。公益認定を受けていない一般財団法人には直接は適用されませんが、将来公益認定を申請する場合には満たす必要があります。認定申請の流れは、関連記事「公益認定を申請するときの流れと基準」で解説しています。

AEGISの視点

オーナーが設立した財団の運営では、「設立者の想いを守ること」と「法人として独立して運営されること」の両立が常にテーマになります。今回の改正は、後者を制度として求めるものです。

AEGISは、外部理事・外部監事の導入を「一族の関与を減らすための規制」としてだけ捉える必要はないと考えています。財団が長く続くかどうかは、設立者の世代が退いた後も、理念を理解した人が適切に意思決定できるかどうかにかかっています。外部の視点を持つ役員は、助成先の選考や資産運用、自社株の議決権行使といった判断の説明力を高め、結果として設立者の想いを次の世代につなぐ支えになります。

改正への対応を機に、理事会・評議員会・監事の役割分担、一族が担う役割と外部に委ねる役割、情報開示の方針を一度言葉にしておくことをおすすめします。財団の設計全体の考え方は、Pillar記事「社会貢献を続ける財団をどう設計するか」で解説しています。

財団に関する税務や承継の論点は、アイジス税理士法人の専門領域でも紹介しています。

まとめ

  • 令和7年4月施行の改正で、公益法人には外部理事・外部監事の設置、理事と監事の間の特別利害関係の排除、会計監査人の設置範囲の拡大が求められるようになりました。
  • 外部理事は小規模法人(収益と費用・損失がいずれも3,000万円未満)が適用除外ですが、外部監事に適用除外はありません。
  • 財産目録等の公表、役員ごとの報酬額や2,000万円超の報酬の理由、関連当事者取引の範囲拡大など、情報開示も拡充されています。
  • オーナー一族が関与する財団では、親子で理事と監事を務める体制や、一族の会社との取引の説明可能性を点検することが大切です。

よくある質問

Q. 設立者であるオーナーは、公益財団法人の外部理事になれますか?

なれません。公益財団法人の外部理事には、設立者でないことが求められます。設立者が法人の場合も、その法人や子法人の役員・使用人は外部理事になれません。設立者が理事として関与すること自体は可能ですが、別に外部理事を選任する必要があります。

Q. 親が理事長、子が監事という体制は続けられますか?

理事と監事の間に特別利害関係がないことが求められるため、親子が理事と監事に同時に就くことはできません。施行日に在任していた理事・監事については経過措置があり、改選期に合わせて体制を見直すことになります。

Q. 小規模な財団でも外部監事は必要ですか?

必要です。外部理事には収益と費用・損失がいずれも3,000万円未満の法人の適用除外がありますが、外部監事には適用除外がありません。

Q. 外部理事に代表理事をお願いすることはできますか?

できません。代表理事は業務執行理事に当たり、外部理事は業務執行理事でないことが要件だからです。外部理事が業務執行理事となった場合は外部理事の要件を欠くため、他に要件を満たす理事がいなければ認定基準を満たさなくなります。

Q. 公益認定を受けていない一般財団法人にも、これらのルールは適用されますか?

外部理事・外部監事や理事と監事の特別利害関係の排除は、公益認定の基準として定められたものなので、一般財団法人には直接は適用されません。ただし、一般社団・財団法人法には、監事が理事や使用人を兼ねられないことなどの規律があり、将来公益認定を目指す場合は改正後の基準を満たす必要があります。

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参考資料・出典

公的資料・一次情報

  • 内閣府大臣官房公益法人行政担当室「新公益法人制度 ~『自律的なガバナンスの充実、透明性の向上』編~」
    確認日:2026-10-10
  • 内閣府大臣官房公益法人行政担当室「新公益法人制度 説明資料」(R8.4.15版)
    確認日:2026-10-10
  • e-Gov法令検索「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(3条の2、5条10号〜16号)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000049/20260401_506AC0000000030
    確認日:2026-10-10
  • e-Gov法令検索「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令」(6条、7条)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/419CO0000000276/20260401_507CO0000000234
    確認日:2026-10-10

書籍

  • 『公益法人・一般法人のQ&A 運営・会計・税務(五訂版)』稲葉威雄・鳥飼重和・中田ちず子 監修、大蔵財務協会、P.153-161
  • 『令和7年4月施行対応 フローでわかる 一般/公益 社団・財団法人運営ガイドブック』富川昌之 著、新日本法規出版、P.11-16

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。