公益認定を申請するときの流れと基準|公益目的事業の判断、令和6年改正後の認定基準、申請書類と審査

多数の書類を読み込む4人の委員

公益認定とは、一般社団法人・一般財団法人が、行政庁から「公益目的事業を主たる目的とする法人」として認められ、公益社団法人・公益財団法人になるための手続です。

申請の流れを一言でまとめると、定款を認定基準に合わせて変更し、事業と財務の見込みを示した申請書を行政庁に提出し、有識者による合議制の機関の審査(諮問・答申)を経て認定を受けるというものです。行政庁が定める標準的な処理期間は、申請書の提出の翌日から4か月とされています。

基準は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(認定法)5条に定められており、令和6年の法改正(令和7年4月施行)で財務に関する基準などが見直されました。この記事では、申請を具体的に考え始めた方に向けて、判断の中心となる公益目的事業の考え方、改正後の認定基準、申請書類と審査の流れを順に整理します。

申請できる法人と申請先

公益認定を申請できるのは、公益目的事業を行う一般社団法人・一般財団法人です(認定法4条)。新たに公益法人を目指す場合も、まず一般社団法人または一般財団法人を設立し、そのうえで申請する流れになります。

申請先の行政庁は、内閣総理大臣または都道府県知事です(認定法3条)。事務所の所在や公益目的事業を行う区域などによって、いずれが行政庁になるかが決まります。国が行政庁となる場合は内閣府の公益認定等委員会が、都道府県の場合は各都道府県に置かれた合議制の機関が、認定の可否について審議します。

申請から認定までの流れ

内閣府の「申請の手引き〔公益認定編〕」などをもとに、申請から認定後までの流れを整理すると次のとおりです。

段階主な内容確認したいこと
1. 事業と体制の整理行う事業を公益目的事業と収益事業等に区分し、事業ごとの収支と人員体制を見通す各事業が公益目的事業に当たるか、財務の基準を満たせるか
2. 定款の変更案の作成理事会の設置、役員構成、残余財産の帰属など、認定基準に合わせた定款の変更案を作る内閣府「公益認定のための『定款』について」との整合
3. 法人内部の意思決定社員総会・評議員会の特別決議で定款変更を決め、理事会で申請を決議する公益認定を前提とした定款変更であることを明確にしておく
4. 申請書の作成・提出申請書、別紙、財務の別表、定款、事業計画書・収支予算書などを提出(電子申請が推奨)書類間の数値の整合
5. 審査行政庁が審査し、必要に応じて補正や追加資料を求める申請内容に変更が生じた場合は速やかに連絡
6. 諮問・答申公益認定等委員会または都道府県の合議制の機関に諮問し、答申を受ける—
7. 認定・通知認定または不認定の処分が通知される—
8. 認定後の手続名称変更の登記、分かち決算、定期提出書類の準備認定日を境に会計と運営のルールが変わる

※AEGIS作成。実際の手順は行政庁の案内に従ってください。

認定を受けると、名称中の「一般社団法人」「一般財団法人」は「公益社団法人」「公益財団法人」に変更する定款の変更をしたものとみなされます(認定法9条1項)。名称変更そのものについて社員総会等で決議する必要はありませんが、公益認定を受けたことを証する書面を添付して名称変更の登記を行う必要があります(同条2項)。

最大の論点:公益目的事業に当たるか

公益目的事業の定義

公益目的事業とは、学術、技芸、慈善その他の公益に関する認定法の別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいいます(認定法2条4号)。別表には、学術・科学技術の振興、文化・芸術の振興、高齢者の福祉の増進など、23の号が掲げられています。

判断は2段階で考えると整理しやすくなります。

  1. その事業が、別表のいずれかの号に掲げる種類の事業に当たるか
  2. その事業が、特定の人だけでなく、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与しているか

多くの申請で検討の中心となるのは2です。会員だけが利益を受ける事業や、特定の企業・個人の利益につながる事業は、公益目的事業と認められにくくなります。

事業の類型ごとのチェックポイント

申請書では、事業を検査・検定、資格付与、講座・セミナー、助成(応募型)、施設の貸与などの類型に当てはめ、類型ごとの「チェックポイント」に沿って公益性を説明します。たとえば奨学金や研究助成のような助成事業であれば、応募の機会が広く開かれているか、選考が公正に行われる仕組みがあるか、といった点を説明することになります。

チェックポイントは、不特定多数の者の利益の増進に寄与するかどうかを事実認定するための留意点です。チェックポイントに機械的に当てはまらない事業でも、事業の目的・内容・受益者の範囲を具体的に示すことで、公益性を説明できる余地があります。

認定基準:令和6年改正後の全体像

認定法5条は、21の号で認定基準を定めています。オーナーが財団・社団を設計する視点で分類すると、次のように整理できます。

分類主な基準根拠(認定法5条)
事業の内容公益目的事業を主たる目的とすること/投機的な取引など社会的信用を損なう事業を行わないこと/収益事業等が公益目的事業に支障を及ぼさないこと1号・5号・7号
財務公益目的事業について中期的な収支の均衡が図られる見込みであること/公益目的事業比率が50%以上となる見込みであること/使途不特定財産額が制限を超えない見込みであること/経理的基礎・技術的能力があること2号・6号・8号・9号
ガバナンス理事・監事のそれぞれについて、親族等の特別利害関係者の合計が3分の1を超えないこと/他の同一団体の関係者が3分の1を超えないこと/外部理事・外部監事を置くこと(理事は一定規模以上の法人)/一定規模以上の法人は会計監査人を置くこと/役員報酬が不当に高額でないこと10号〜16号
利益供与の禁止社員・役員などの関係者に特別の利益を与えないこと/営利事業者などに寄附その他の特別の利益を与えないこと3号・4号
財産他の団体の意思決定に関与できる株式などを保有しないこと(実質的に支配するおそれがない場合を除く)/不可欠特定財産の定款への定め/認定取消し時・清算時の財産の帰属先の定款への定め18号〜21号

※AEGIS作成。各号の正確な要件は認定法・同施行令・公益認定等ガイドラインで確認が必要です。

令和6年改正で変わった主な点

令和6年の認定法改正(令和7年4月1日施行)では、主に次の点が見直されました。

  • 収支相償から中期的収支均衡へ:公益目的事業の収入がその実施に要する費用を超えないことを求める考え方が、一定期間で収支の均衡を図る考え方に改められました。将来の公益目的事業に充てるために積み立てる「公益充実資金」も設けられています。
  • 遊休財産額から使途不特定財産額へ:保有できる財産の上限に関する基準の名称と内容が見直されました。
  • 外部理事・外部監事:法人やその子法人の業務執行者でなかった者を役員に含めることが求められるようになりました。

申請書の財務の別表も、この改正に合わせて「中期的収支均衡」「公益目的事業比率」「使途不特定財産額」の3つの計算表で構成されています。改正後の財務規律については、関連記事「公益法人の財務規律をオーナー目線で読む」で詳しく解説しています。

欠格事由

認定基準とは別に、認定法6条は、公益認定を受けられない欠格事由を定めています。役員に一定の法令違反歴がある場合、過去に公益認定を取り消されてから一定期間を経過していない場合、税の滞納処分を受けている場合、暴力団員等が事業活動を支配している場合などです。役員の候補者を選ぶ段階で確認しておきたい事項です。

申請書類の構成

内閣府の手引きや申請書の様式によると、申請書類は大きく次のように構成されています。

  • 申請書(かがみ文書)
  • 別紙1:法人の基本情報
  • 別紙2:法人の事業(公益目的事業の種類・内容、収益事業等の内容など)
  • 財務の別表:中期的収支均衡、公益目的事業比率、使途不特定財産額の計算
  • 別添:法人の組織、株式等の保有状況、経理的基礎の説明、役員等名簿、確認書
  • 添付書類:定款、事業計画書・収支予算書、財産目録・貸借対照表、役員等の報酬等の支給基準、許認可等を証する書類(必要な場合)など

書類の数は多いものの、中心にあるのは「どのような事業を、どのような体制と資金で、継続して行うのか」という一貫した説明です。事業計画書、収支予算書、財務の別表の数値が相互に整合していることが、審査を円滑に進めるうえで重要になります。

AEGISの視点

オーナーが公益財団法人を設立し、自社株や不動産を拠出して社会貢献を続けたいと考える場合、公益認定の基準は「家族の財団」から「社会の財団」へ移るための条件といえます。親族等が理事・監事のそれぞれ3分の1を超えないこと、外部の役員を迎えること、関係者に特別の利益を与えないことは、いずれもオーナー家の影響力に一定の歯止めをかけるものです。

とくに自社株を拠出する場合は、他の団体の意思決定に関与できる株式の保有を原則として制限する基準や、配当収入と中期的収支均衡の関係を、申請前に検討しておく必要があります。株式の議決権をどう行使するかという方針も、申請段階から説明できるよう整理しておくことが望まれます。議決権の考え方は、関連記事「財団が保有する自社株の議決権をどう行使するか」で解説しています。

AEGISは、公益認定の申請書を「審査を通すための書類」ではなく、財団が今後何十年も守っていく事業と体制の設計図として作るべきだと考えています。申請の段階で描いた事業と財務の見通しは、認定後の定期提出書類や立入検査でも確認され続けるからです。

一方で、こうした基準を満たし続ける体制を一族で整え、次の世代にも引き継いでいくことが重いと感じる場合は、自ら財団を設立せず、運営体制を備えた既存の財団の中に基金を設ける方法もあります。AEGISでは、そのための器としてアイジスレガシー財団を設立しています。どの方法を選ぶかは、目的の独自性と、運営を担い続けられる人がいるかどうかで判断するのが現実的です。

一般財団法人のまま運営する場合との違いは、親記事「一般財団法人と公益認定の違い」で、財団全体の設計は Pillar記事「社会貢献を続ける財団をどう設計するか」で解説しています。

財団関連の税務の論点については、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。

まとめ

  • 公益認定は、一般社団法人・一般財団法人が行政庁に申請し、公益認定等委員会または都道府県の合議制の機関への諮問・答申を経て受けるものです。標準処理期間は申請の翌日から4か月とされています。
  • 最大の論点は、各事業が認定法別表の事業に当たり、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する「公益目的事業」かどうかです。
  • 認定基準は認定法5条の21号で、令和6年改正(令和7年4月施行)により中期的収支均衡、使途不特定財産額、外部理事・外部監事などが導入されました。
  • 申請前に、定款を認定基準に合わせて変更し、社員総会・評議員会の特別決議と理事会の決議を経ておく必要があります。
  • 認定後は名称変更の登記、分かち決算、定期提出書類など、運営のルールが切り替わります。

よくある質問

Q. 公益認定の審査にはどのくらいの期間がかかりますか?

内閣府は、公益認定の標準処理期間を、申請書が提出された日の翌日から4か月としています。ただし、これは申請後の審査の目安であり、事業の整理や定款変更、書類の準備にはこれとは別に相当の期間を見込む必要があります。

Q. 設立したばかりの一般財団法人でも申請できますか?

申請自体は可能です。ただし、事業計画書や収支予算書で、公益目的事業を継続して行うための経理的基礎や技術的能力があることを示す必要があります。実績が乏しい場合は、事業の内容と資金計画を具体的に説明できるかが重要になります。

Q. 理事の多くが家族のままでも公益認定を受けられますか?

認定基準では、各理事について、その理事と配偶者・三親等以内の親族などの特別利害関係にある理事の合計が理事総数の3分の1を超えないことが求められます。監事についても同様です。家族中心の役員構成のままでは基準を満たさないため、役員の構成を見直す必要があります。

Q. 自社株を保有している財団は公益認定を受けられますか?

認定基準では、他の団体の意思決定に関与できる株式などを保有しないことが原則とされ、その保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがない場合は例外とされています。保有する株式の割合や議決権の扱いによって判断が分かれるため、申請前に確認が必要です。

Q. 公益認定を受けた後、名称変更の手続は必要ですか?

名称を公益社団法人・公益財団法人に変える定款変更は、認定を受けたことにより行ったものとみなされます。一方で、登記上の名称は変更の登記が必要で、公益認定を受けたことを証する書面を添付して申請します。

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参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『令和7年4月施行対応 フローでわかる 一般/公益 社団・財団法人運営ガイドブック』富川昌之 著、新日本法規出版、はじめに、第2章 P.254-258
  • 『公益認定の判断基準と実務』出口正之 著、全国公益法人協会、第Ⅲ部 P.217-232

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。