資産管理会社と事業会社の資金管理|会社間・オーナー間の貸し借りをどう整理するか

複数の建物模型と積み上げた硬貨、電卓、資料が並ぶ机

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事業会社を経営しながら資産管理会社も持っているオーナーにとって、「どの会社のお金を、どこに、どう動かしてよいのか」は、日常的に生じる悩みの一つです。事業会社の資金繰りが厳しいときに資産管理会社から融通する、オーナーが個人の資金を会社に入れる、会社がオーナーに立て替える——いずれも同族のグループでは自然に起こる資金移動です。

しかし、会社とオーナー、会社と会社は、税務上はそれぞれ別の人格です。グループの中のお金の移動であっても、取引ごとに「貸付なのか、出資なのか、贈与なのか」が問われ、利息の有無や契約の整え方によって課税関係が変わることがあります。

この記事では、資産管理会社・事業会社・オーナー個人の間で生じやすい資金移動を類型ごとに整理し、日頃から管理しておきたいポイントを解説します。

なぜ資金管理が論点になるのか

オーナー一族が複数の会社を持つと、それぞれの会社とオーナー個人の間に、次のような取引が生まれやすくなります。

  • 事業会社が、資産管理会社の保有する土地・建物を借りて使う
  • 資産管理会社が、事業会社に運転資金を貸し付ける
  • オーナー個人が、会社に資金を貸し付ける(いわゆる役員借入金)
  • 会社が、オーナー個人に資金を貸し付ける(いわゆる役員貸付金)
  • 会社が、オーナーや家族に役員報酬・給与・配当を支払う

一つひとつは小さな取引でも、長年積み重なると、各社の決算書に多額の貸付金・借入金が残り、どの会社がどれだけの財産を持っているのかが分かりにくくなります。そして、それはいずれ、株式の評価や相続財産の範囲、後継者が引き継ぐ会社の健全性に影響します。

資金移動の類型と主な確認点

AEGISでは、グループ内の資金移動を次の5つの類型に分けて確認することをおすすめしています。

類型典型的な例主な確認点
A. 会社 → オーナー個人への貸付会社がオーナーの私的支出を立て替え、貸付金として残っている利息の設定、返済の実態、給与との区別
B. オーナー個人 → 会社への貸付会社の資金不足をオーナー個人の資金で補った返済の見通し、相続財産としての扱い
C. 会社 → 会社への貸付資産管理会社が事業会社に運転資金を貸した利率の合理性、寄附金・受贈益の問題、株主構成
D. 会社間の不動産の賃貸借事業会社が資産管理会社の建物や土地を借りている賃料水準、土地の貸し借りと借地権の整理
E. 会社 → 個人への報酬・配当家族への役員報酬、株主への配当職務の実態、会社に残す資金とのバランス

※上記はAEGISが論点整理のために作成した分類です。

以下、類型ごとに見ていきます。

A. 会社からオーナー個人への貸付

会社がオーナーや役員にお金を貸す場合、無利息や、通常より低い利率で貸し付けると、本来支払うべき利息との差額が、役員が受けた経済的な利益(給与)として扱われる場合があります。

国税庁によれば、役員や使用人に貸し付けた金銭の利息相当額は、会社が他から借り入れて貸し付けた場合はその借入金の利率、それ以外の場合は貸付けを行った年ごとに定められた利率によるとされています(令和8年中の貸付けは年1.3%)。そのうえで、次のような場合には、給与として課税しなくてよいとされています(国税庁 No.2606)。

  • 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員や使用人に、合理的と認められる金額や返済期間で貸し付ける場合
  • 会社の借入金の平均調達金利など、合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって貸し付ける場合
  • 上記以外で、利息相当額と実際に支払う利息の差額が、年間5,000円以下である場合

実務上は、利率よりもむしろ「そもそも貸付として管理されているか」が問題になりがちです。会社の資金で私的な支出を立て替え、そのまま返済されずに残っている状態は、貸付としての実態が問われるおそれがあります。金銭消費貸借契約書を作成し、返済計画どおりに返済されているかを確認することが基本です。

B. オーナー個人から会社への貸付

会社の資金が不足したとき、オーナーが個人の資金を会社に貸し付けるのは珍しくありません。ここで見落とされがちなのは、オーナーが会社に貸したお金は、オーナー個人の財産(会社に対する債権)として残るという点です。

会社への貸付金は、オーナーに相続が発生すれば相続財産に含まれます。財産評価基本通達では、貸付金は原則として元本と既経過利息の合計額で評価され、元本に算入しないのは、債務者の破産手続開始や事業廃止など、回収が不可能または著しく困難と見込まれる場合に限られています(同通達204・205)。会社の財務状況から見て返済の見込みが乏しい貸付金であっても、相続財産として扱われることになり得るため、「返ってこないお金に相続税がかかる」という事態が起こり得ます。

役員借入金が多額に積み上がっている場合には、次のような点を早めに整理しておくことが大切です。

  • 会社に返済能力があるか、返済計画を立てられるか
  • 返済が難しい場合に、どのような方法で整理するか(整理の方法によっては、会社側に課税関係が生じることもあるため、個別の検討が必要です)
  • 事業承継・相続の計画の中で、貸付金を誰がどう引き継ぐか

C. 会社から会社への貸付

資産管理会社から事業会社へ、あるいはその逆に、グループ会社の間で資金を貸し借りすることもよくあります。

利息を取らない貸付は「経済的利益の供与」になり得る

会社同士はそれぞれ独立した法人であるため、無利息や著しく低い利率で資金を貸し付けると、本来受け取るべき利息相当額について、貸した側の会社から借りた側の会社への経済的な利益の供与と見られる場合があります。

国税庁によれば、法人税法上の寄附金には、金銭その他の資産の贈与だけでなく、経済的な利益の無償の供与も含まれるとされています(国税庁 No.5281)。寄附金とされた金額は、損金に算入できる額に限度があります。また、借りた側の会社では、受けた利益が受贈益として益金に算入される場合があります。

ただし、グループ会社への貸付が無利息であることにも、取引の経緯や目的によってはさまざまな事情があり得ます。法人税基本通達では、業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行う、合理的な再建計画に基づく無利息貸付けなど、相当な理由があると認められる場合には寄附金に当たらないとする取扱いも示されています(法人税基本通達9-4-2)。どのような場合に寄附金や受贈益とされるかは個別の事実関係によって判断が分かれるため、利率を決めた根拠を記録に残しておくことが重要です。

「完全支配関係」がある場合の取扱い

グループ会社の間に、100%の株式保有関係(完全支配関係)がある場合には、特別な取扱いがあります。国税庁によれば、完全支配関係(法人による完全支配関係に限ります)がある他の内国法人に対して支出した寄附金は、受贈益に対応するものについて、その全額が損金に算入されないとされています(国税庁 No.5281)。

ここで注意したいのは、この取扱いが「法人による完全支配関係」に限られている点です。たとえば、オーナー個人が資産管理会社と事業会社の株式をそれぞれ100%持っている「兄弟会社」の関係では、取扱いが異なる場合があります。グループの株主構成によって、同じ貸付でも課税関係が変わり得るため、株主構成と資金の流れをあわせて確認することが大切です。

D. 会社間の不動産の賃貸借

事業会社が、資産管理会社の保有する本社ビルや工場、店舗などを借りて使っているケースは多く見られます。

賃料の水準

賃料が周辺の相場に比べて高すぎたり低すぎたりすると、一方の会社から他方の会社への利益の移転と見られる場合があります。どのような根拠で賃料を決めたのか(周辺相場、固定資産税などの負担、建物の取得価額など)を記録しておくことが基本です。

土地の貸し借りと借地権

資産管理会社の土地の上に事業会社が建物を建てる場合のように、会社間で土地を貸し借りすると、借地権の問題が生じることがあります。法人税の取扱いでは、借地権の設定に際して権利金を授受しない場合、一定の地代(相当の地代。土地の更地価額のおおむね年6%程度。法人税基本通達13-1-2、平成元年直法2-2)を収受するか、将来土地を無償で返還する旨を定めて「土地の無償返還に関する届出書」を提出するなどの対応をとらないと、借地権相当額について課税関係が生じることがあります。

国税庁によれば、土地の無償返還に関する届出は、法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させる場合で、契約書において将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められているときに、法人と借地人の連名で、遅滞なく提出する手続とされています(国税庁「土地の無償返還に関する届出」、法人税基本通達13-1-7)。個人と法人の間の土地の貸し借りについては、関連記事「個人保有の不動産を法人へ移す前の比較」でも解説しています。

E. 報酬・配当と会社に残す資金

会社からオーナーや家族に資金を移す正規の経路は、役員報酬・給与・配当などです。資産管理会社で家族に報酬を支払う場合は、その家族が実際に管理業務などに従事しており、職務内容に見合った金額であることが前提です。

また、会社にどれだけの資金を残し、どれだけを個人に移すかは、税負担だけでなく、将来の修繕・建替え資金、借入金の返済、そして株式の評価にも関わります。この配分の考え方は、関連記事「役員報酬・配当・内部留保の考え方」で解説しています。

日頃から管理しておきたい5つのこと

グループ内の資金移動は、後からまとめて整理しようとすると、取引の経緯が分からなくなり、説明が難しくなります。AEGISでは、次の5つを日常的な管理項目とすることをおすすめしています。

  1. 取引ごとに契約書を作る:金銭消費貸借契約書、賃貸借契約書、管理委託契約書など、取引の内容を書面にする
  2. 利率・賃料の根拠を残す:借入金の調達金利、周辺相場、固定資産税額など、金額を決めた根拠を記録する
  3. 返済を契約どおりに実行する:返済計画を立て、実際の入出金と照合する
  4. 会社間・個人との残高を一覧にする:決算ごとに、各社の貸付金・借入金・未払金などの残高と相手先を一表にまとめる
  5. 意思決定の記録を残す:取締役会や株主総会など、会社としての意思決定の記録を整える(取締役と会社との取引には、株主総会〔取締役会設置会社では取締役会〕の承認などの会社法上の手続きが必要となる場合があります。会社法356条・365条)

特に4の一覧表は、オーナー一族の財産の全体像を把握するうえで有効です。会社が増えるほど、個々の決算書だけでは資金の流れが見えにくくなるためです。

実務上注意したいポイント

「とりあえず仮払金」を放置しない

用途が決まらないまま「仮払金」「立替金」として処理された資金は、時間が経つほど性質の説明が難しくなります。決算までに、貸付金・費用・報酬などのいずれに当たるのかを整理しておくことが大切です。

赤字の会社への資金融通は慎重に

業績の悪い会社に資金を貸し付ける場合、回収可能性が問題になります。回収できない貸付金は、貸した側の会社やオーナー個人の財産として残り続け、後から整理しようとすると課税関係が生じることもあります。

株主構成とセットで考える

資金の流れの税務上の取扱いは、会社同士の資本関係(完全支配関係の有無など)によって変わることがあります。会社の設立や株式の移転を検討する際には、グループ内の資金の流れへの影響もあわせて確認することが望まれます。

AEGISの視点

資産管理会社と事業会社の資金管理は、一見すると経理の問題に見えます。しかしAEGISは、これを「グループ全体の財産を、誰がどこで持っているかを明確にしておくこと」、すなわち所有の設計の一部と捉えています。

会社とオーナーの間の貸し借りが整理されていないと、事業承継や相続の場面で「この貸付金は誰が引き継ぐのか」「この会社の株価はなぜこんなに高いのか」といった問いに、すぐには答えられなくなります。反対に、日頃から資金の流れが整理されていれば、どの会社に財産を集め、どの会社をどの後継者に渡すのかといった承継の設計を、具体的に考えられるようになります。

税務上のリスクを避けることは大切ですが、それ以上に重要なのは、資金の流れを家族と後継者が理解できる形にしておくことです。グループ全体の財産の一覧表を、決算のたびに更新していくこと——それが、複数の会社を持つオーナーにとって最も確実な準備だとAEGISは考えています。

資産管理会社の設立や位置付けを含む全体像は、関連記事「資産管理会社はいつ設立を検討すべきか」で解説しています。

法人との関係を含む資産税務の論点については、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。

まとめ

  • 同じグループ内の資金移動でも、会社とオーナー、会社と会社は税務上それぞれ別の人格として扱われます。
  • 会社から役員への無利息・低利の貸付は、利息相当額が給与として扱われる場合があります(例外となる場合の基準は国税庁が示しています)。
  • オーナーから会社への貸付金は、オーナーの相続財産になり得ます。返済の見通しを早めに整理することが大切です。
  • 会社間の無利息貸付などは、寄附金・受贈益の問題が生じ得ます。完全支配関係の取扱いは「法人による完全支配関係」に限られる点に注意が必要です。
  • 契約書・金額の根拠・返済の実行・残高一覧・意思決定の記録の5つを、日頃から管理しておくことが基本です。

具体的な取扱いは、取引の経緯や会社の状況などの個別事情によって異なります。

よくある質問

Q. 資産管理会社から事業会社に無利息でお金を貸してもよいですか?

貸すこと自体は可能ですが、無利息や著しく低い利率の場合、本来受け取るべき利息相当額が寄附金や受贈益として扱われる場合があります。取扱いは取引の目的や経緯、会社同士の資本関係によって異なるため、利率を決めた根拠を記録し、個別に確認することが大切です。

Q. 社長が会社から借りているお金に利息を付けないと、どうなりますか?

利息相当額と実際の利息との差額が、社長が受けた経済的利益として給与扱いになる場合があります。国税庁は、利息相当額の基準となる利率や、合理的な利率を定めている場合、差額が年間5,000円以下の場合など、課税しなくてよい場合を示しています。

Q. 社長が会社に貸しているお金は、相続のときにどうなりますか?

会社に対する貸付金(債権)として、相続財産に含まれることになり得ます。会社の財務状況によって返済が難しい場合でも相続財産として扱われ得るため、相続の前に返済計画や整理の方法を検討しておくことが望まれます。

Q. 兄弟会社の間の資金のやり取りでも注意が必要ですか?

注意が必要です。完全支配関係がある法人間の寄附金・受贈益の特別な取扱いは「法人による完全支配関係」に限られるため、オーナー個人が各社の株式を持つ兄弟会社の関係では、取扱いが異なる場合があります。株主構成と資金の流れをあわせて確認することが大切です。

Q. 事業会社が資産管理会社の土地に建物を建てる場合、何に注意すべきですか?

土地の貸し借りに伴う借地権の課税関係が論点になります。権利金を授受しない場合には、相当の地代の収受や、土地の無償返還に関する届出書の提出などの対応を検討する必要があります。いずれを選ぶかによって、将来の株式評価などにも影響し得るため、事前に整理しておくことが大切です。

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参考資料・出典

公的資料・一次情報

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。