マンション標準管理規約の改正で所有者に何が変わるか|令和7年改正の要点と、賃貸中・相続した所有者が確認したいこと

建物前の庭で資料を手に話す男性オーナーと女性担当者

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国土交通省は、令和7年(2025年)10月17日に「マンション標準管理規約」を改正しました。同じ年の5月に区分所有法などのマンション関係法が改正され、その中核となる改正区分所有法が令和8年(2026年)4月1日に施行されたことに対応するものです。

結論から言えば、区分所有者が押さえておきたいのは次の3点です。

  • 標準管理規約は「ひな型」であり、自分のマンションの規約は自動的には変わらない
  • ただし、改正区分所有法に反する規約の定めは、施行日から効力を失っている
  • 総会の決め方や、連絡が取れない所有者・海外に住む所有者の扱いが変わり、賃貸中や相続した所有者ほど影響を受けやすい

この記事では、令和7年改正の主な内容を整理したうえで、自分のマンションで確認したいことと、賃貸に出している所有者・相続でマンションを取得した所有者への影響を解説します。区分所有法そのものの改正内容(建替え・再生の決議要件など)は、関連記事「区分所有法の改正でマンション所有者に何が変わるか」で扱っています。

標準管理規約とは何か

マンションの管理規約は、建物や敷地の管理・使用について区分所有者の間で定めるルールです。区分所有法では、規約の設定・変更・廃止は集会(総会)の決議によるとされています(建物の区分所有等に関する法律31条)。

標準管理規約は、国土交通省が各マンションの管理規約づくりの参考として示しているモデル(ひな型)です。単棟型、団地型、複合用途型(店舗と住宅が併存するもの)の3種類があり、それぞれにコメント(解説)が付いています。

標準管理規約が改正されても、各マンションの管理規約が自動的に書き換わるわけではありません。自分のマンションの規約を変えるには、総会で規約変更の決議をする必要があります。

なぜ今回の改正が重要なのか

今回の改正が重要なのは、区分所有法の改正と連動しているためです。改正区分所有法の附則では、施行の際に効力を有する規約の定めのうち、改正後の法律に抵触するものは、施行日から効力を失うとされています(改正法附則2条3項)。

例えば、総会の定足数や決議要件について、改正前の法律に合わせて定めていた規約の条文は、改正後の法律に抵触する可能性が高いとされています。そのまま放置すると、規約に書かれている内容と実際に適用されるルールが食い違い、総会運営の混乱や誤解の原因になります。国土交通省も、各マンションで管理規約を見直す必要があるとしています。

令和7年改正の主な内容

国土交通省の改正の概要は、大きく三つのグループに整理されています。主な項目は次のとおりです。

グループ主な改正項目(標準管理規約の条項)区分所有者にとっての意味
総会の手続き・決議決議要件の見直し(47条:出席者の多数決による特別決議、定足数の見直し、共用部分の変更や再生の決議要件の緩和など)欠席すると、出席者だけで物事が決まりやすくなる
招集通知に議案の要領を記載(43条)通知で議案の中身を事前に確認できる
所在等不明区分所有者を決議の母数から除く手続き(67条の3・新設)連絡が取れない所有者がいても決議が進められる
権利・資金・財産の管理国内管理人の制度を活用する手続き(31条の3・新設)海外に住む所有者は、国内の代理人を届け出る
専有部分の保存行為の実施を請求できる旨の明確化(23条など)共用部分の工事に関連して、専有部分の工事を求められる場合がある
修繕積立金の使途の見直し(28条)新しい再生手法の調査・設計、積立金の運用費用、改良工事にも使えることを明確化
所有者不明・管理不全の専有部分の管理制度の活用(67条の4・67条の5・新設)放置された住戸への対応手段が整う
共用部分に関する損害賠償請求を理事長が一元的に行使(24条の2・新設)共用部分の不具合への請求をまとめて進めやすくなる
管理組合の運営など役員の職務代行、欠格条項、本人確認、防災・防火管理者、喫煙ルールなど役員の担い手不足やなりすましへの対応

※国土交通省「令和7年マンション標準管理規約改正の概要」をもとにAEGISが整理。項目の詳細は国土交通省の新旧対照表等で確認できます。

総会の決議:出席者で決まる仕組みへ

改正区分所有法では、普通決議は出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決めるとされ(39条)、規約の変更などの特別決議も、一定の定足数を満たしたうえで出席者の4分の3以上で決めることになりました(31条など)。書面や代理人による議決権の行使は、出席として数えられます(39条2項)。

標準管理規約もこれに合わせて改められました。これまでは「欠席しても、反対したのと同じ効果になる」場面がありましたが、改正後は欠席者が決議の母数から外れます。総会に関心を持たない所有者が多いマンションでも決議ができるようになった反面、欠席すれば自分の意見が反映されないまま決まることになります。

連絡が取れない所有者を母数から除く

相続登記がされないまま所有者が分からない住戸や、所在が分からない所有者がいると、決議に必要な賛成が集まらないことがありました。改正区分所有法では、裁判所の手続きにより、こうした所在等不明区分所有者を集会の決議から除外できる仕組みが設けられ(38条の2)、標準管理規約にもその手続きの規定が置かれました。

海外に住む所有者と国内管理人

区分所有者が国内に住所や居所を持たない場合に、専有部分と共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住む人を国内管理人として選任できる制度が設けられました(区分所有法6条の2)。国内管理人は、保存行為、総会の招集通知の受領、議決権の行使、管理費などの支払いといった権限を持ちます。

標準管理規約では、国内管理人を選任した場合にその旨や氏名・住所を理事長に届け出る手続きが定められています。また、コメントでは、規約で国内管理人の選任を義務づける場合の規定例も示されています。

修繕積立金の使途

修繕積立金の使い道について、新たな再生手法(建物の更新・売却・取壊しなど)の調査・設計段階の支出、積立金の管理・運用に要する費用、建物や設備の性能を新築時より向上させる改良工事にも充てられることが明確にされました。積立金の水準そのものを考えるときは、関連記事「マンションの管理費・修繕積立金が上がるとき」も参考にしてください。

管理会社が管理者になる方式への対応

役員の担い手不足を背景に、管理会社が区分所有法上の管理者に選任される「管理業者管理者方式」をとるマンションもあります。国土交通省は、理事会を置かずにこの方式をとる場合のモデルとして、標準管理規約の「書き換え表」も公表しています。管理会社に広い権限が集まる方式のため、管理者の業務の公正さをどう担保するかが規約上の重要な論点になります。

自分のマンションで確認したいこと

規約の見直しが済んでいるか

国土交通省の資料では、規約改正のための総会の招集手続きを令和8年3月31日までに始めたか、4月1日以降に始めたかで、手続きが異なるとされています。4月1日以降に招集する場合は、改正区分所有法の定足数・決議要件によることになります。また、招集通知は原則として会日の1週間前までに、会議の目的と議案の要領を示して発することとされ(区分所有法35条1項)、規約で短縮することはできなくなりました。

区分所有者としては、次の点を確認しておくと安心です。

  • 管理組合が、改正区分所有法に合わせた規約変更を済ませたか、または予定しているか
  • 総会の定足数・決議要件の条文が、改正後のルールと食い違っていないか
  • 修繕積立金の使途、国内管理人の届出、所在等不明区分所有者の手続きなどの規定が整っているか

賃貸に出している所有者への影響

自分は住まずに賃貸に出している所有者は、総会に出席する機会が少なく、管理組合の情報が届きにくい立場にあります。

  • 総会への関与:出席者の多数決で決まる場面が増えるため、議決権行使書や委任状を確実に提出することが、これまで以上に大切になります。
  • 通知の受け取り先:区分所有法では、所有者が管理者に通知を受ける場所を伝えていない場合、招集通知は専有部分の所在地にあてればよいとされています(35条3項)。賃貸中の住戸に通知が届いても自分の手元に来ないことがないよう、通知先を管理組合に届けておきます。
  • 入居者のルール:占有者(入居者)は、建物の使用方法について、区分所有者が規約や総会決議に基づいて負う義務と同じ義務を負います(区分所有法46条2項)。喫煙ルールなど使用方法に関する規定が変わった場合は、入居者への周知も必要になります。
  • 海外赴任・海外移住:国内に住所がなくなる場合は、国内管理人の選任と届出を検討します。

相続でマンションを取得した所有者への影響

相続で取得したマンションは、手続きが後回しになりやすく、「連絡の取れない所有者」になってしまうリスクがあります。

  • 相続登記と管理組合への届出:相続登記は義務化されています。あわせて、管理組合に新しい所有者として届け出て、管理費等の引落口座や通知先を変更します。相続登記の義務化は関連記事「相続登記と住所等変更登記の義務化への対応」で解説しています。

  • 遺産分割が終わるまでの対応:相続人が複数で共有になっている間は、議決権を行使する人を決めておく必要があります。区分所有法では、専有部分が共有の場合、招集通知は議決権を行使すべき者(定めがなければ共有者の一人)にすれば足りるとされています(35条2項)。

  • 管理費の滞納を引き継がない:管理費等の滞納分は、区分所有権を引き継いだ人にも請求できるとされています(区分所有法8条)。相続や購入の前後で、滞納の有無を確認しておきます。

実務上注意したいポイント

  • 標準管理規約は義務ではない:各マンションの実情に合わせて取捨選択されるため、自分のマンションの規約を直接確認することが基本です。
  • 総会資料と議事録を保管する:規約変更の決議内容は、売却や相続のときに買主や相続人が確認する資料にもなります。
  • 使用細則も確認する:喫煙や防災などは、規約本体ではなく使用細則で定められることがあります。

AEGISの視点

標準管理規約の改正は、管理組合の役員だけの話と受け止められがちです。しかし今回の改正の中心にあるのは、「関心を持たない所有者、連絡の取れない所有者がいても、マンションの管理が止まらないようにする」という考え方です。裏を返せば、関与しない所有者の意見は反映されにくくなる、ということでもあります。

AEGISは、マンションの区分所有権を「建物の一部を持つ権利であると同時に、管理組合という共同体に参加する権利」と考えています。賃貸に出している所有者や、相続で取得した所有者ほど、この参加の側面が弱くなりがちです。通知先の届出、議決権の行使、相続後の手続きといった小さな管理が、資産価値と承継のしやすさを左右します。

制度の改正を「自分ごと」として点検する考え方は、関連記事「税制改正は自分の承継計画に関係するか」で整理しています。マンション管理のルール変更も、保有不動産の点検項目の一つとして位置づけておきたいところです。

まとめ

  • 国土交通省は、令和7年10月17日にマンション標準管理規約を改正しました。改正区分所有法(令和8年4月1日施行)への対応が中心です。
  • 標準管理規約はひな型ですが、改正区分所有法に抵触する各マンションの規約の定めは、施行日から効力を失っています。
  • 総会の決議は出席者の多数決が基本になり、所在等不明区分所有者の除外、国内管理人、修繕積立金の使途などの規定が整えられました。
  • 賃貸中の所有者は通知先の届出と議決権の行使、相続した所有者は相続登記と管理組合への届出を早めに行うことが大切です。
  • 具体的な影響は、各マンションの規約と管理組合の対応状況によって異なります。

よくある質問

Q. 標準管理規約が改正されたら、自分のマンションの規約も自動的に変わりますか?

変わりません。標準管理規約は国土交通省が示すひな型で、各マンションの規約を変えるには総会での決議が必要です。ただし、改正区分所有法に抵触する規約の定めは、令和8年4月1日から効力を失っているため、規約の見直しが必要とされています。

Q. 総会を欠席すると、どのような扱いになりますか?

改正後は、多くの決議が出席者の多数決で決まる仕組みになりました。欠席すると決議の母数に入らず、自分の意見が反映されないまま決まることになります。書面や代理人による議決権の行使は出席として扱われるため、出席できない場合は議決権行使書や委任状を提出しておくことが大切です。

Q. 海外に転勤することになりました。マンションの管理はどうなりますか?

国内に住所や居所がなくなる場合、国内に住む人を国内管理人として選任できます。国内管理人は、総会の招集通知の受領や議決権の行使、管理費等の支払いなどを行えます。管理規約で選任や届出が求められている場合もあるため、自分のマンションの規約を確認しておきましょう。

Q. 相続したマンションの名義変更が済んでいません。何か問題はありますか?

相続登記は義務化されており、手続きが遅れると、管理組合から連絡が取れない所有者として扱われるおそれもあります。相続登記とあわせて、管理組合への届出、管理費等の引落口座や通知先の変更を早めに行うことをおすすめします。

Q. 修繕積立金の使い道が広がると、積立金が足りなくなりませんか?

改正は、修繕積立金を充てられる支出の範囲を明確にしたもので、積立額そのものを定めるものではありません。使い道が広がる分、長期修繕計画と積立金の収支を定期的に見直し、総会で使途を確認することが一層大切になります。

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参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『Q&A マンション標準管理規約の改正(令和7年10月改正)』渡辺晋 著、公益財団法人マンション管理センター 発行、P.9-27、P.60-63、P.72、P.78、P.106-108

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。