共有名義の不動産を解消する方法|持分の買取り・現物分割・売却・共有物分割請求を比べる

複数の住宅模型と鍵束が並ぶ机を囲んで話し合う人々の手元

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相続のときに「ひとまず公平に」と兄弟で共有にした土地や建物が、年月を経て扱いにくい財産になっている。共有名義の不動産について、そうした相談は少なくありません。共有者の一人が亡くなって持分がさらに細かく分かれたり、連絡が取れない共有者が出てきたりすると、売ることも建て替えることも難しくなります。

結論から言えば、共有の解消方法は、①話し合いで持分を一人に集める(買取り・贈与)、②土地を持分に応じて分ける(現物分割)、③全体を売って代金を分ける(換価)、④他の共有不動産と持分を交換する、⑤話し合いがまとまらない場合に裁判所の手続きを使う、の5つに整理できます。方法によって税金のかかり方も大きく異なります。

この記事では、既に共有になっている不動産を対象に、それぞれの方法の特徴と課税関係を比べ、もめずに進めるための順番を解説します。

共有のままでは何が困るのか

民法では、共有物の扱いについて次のようなルールが定められています。

  • 変更:形状や効用の著しい変更を伴う変更(建替えや大規模な改造など)には、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。
  • 管理:管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めます。建物の賃貸借は3年、土地は5年を超えない短期のものであれば、管理として過半数で決められます(民法252条)。
  • 保存:建物の小修繕などの保存行為は、各共有者が単独で行えます。

裏を返すと、長期の賃貸や建替え、全体の売却といった重要な判断には、全員の合意が必要になるということです。共有者の年齢が上がり、相続でさらに共有者が増えるほど、合意は難しくなります。共有の問題は、時間が経つほど解決のコストが上がる問題です。

最初に確認したいこと:その共有は「遺産分割前」か

共有の解消を考える前に、その不動産がどのような共有なのかを確認しておく必要があります。

  • 遺産分割前の共有(遺産共有):相続が発生したものの、遺産分割協議がまだ終わっていない状態です。原則として、遺産分割の手続きで誰が取得するかを決めることになり、共有物分割の手続きは使えません。ただし、相続開始から10年を経過したときは、一定の場合に共有物分割の手続きで扱えるようになりました(民法258条の2)。
  • 通常の共有:遺産分割で共有と決めた場合や、共同で購入した場合などです。この記事で扱う解消方法の多くは、こちらを前提としています。

遺産分割前であれば、まずは遺産分割の中で、不動産を一人が取得して他の相続人に代償金を支払う方法(代償分割)や、売却して代金を分ける方法を検討するのが一般的です。共有にするかどうかを決める段階こそが、最も選択肢の多いタイミングです。

共有を解消する5つの方法

1. 持分の買取り・贈与で一人に集める

他の共有者の持分を買い取る、または贈与を受けて、一人の単独所有にする方法です。共有者の一人が住んでいる自宅や、事業に使っている土地などで選ばれやすい方法です。

  • 売った共有者には、持分の譲渡益に対して譲渡所得の課税が生じます。
  • 親族間で時価より著しく低い価額で売買すると、買った側に、時価との差額について贈与税が課税されることがあります(相続税法7条)。
  • 贈与で集める場合は、受け取った側に贈与税がかかります。

価格の決め方が最も話し合いの焦点になります。不動産会社の査定や不動産鑑定士の評価など、第三者が見ても合理的な根拠を用意することが、もめないための近道です。

2. 土地を持分に応じて分ける(現物分割)

一筆の土地を分筆し、それぞれが単独で所有する土地に分ける方法です。

国税庁の通達では、共有している土地について、その持分に応じた現物分割があったときは、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱うとされています(所得税基本通達33-1の7)。分割後の面積の比と持分割合が一致しなくても、分割後のそれぞれの土地の価額の比が持分割合におおむね等しければ、持分に応じた現物分割に該当するとされています。

ただし、分割後の土地が狭くなりすぎたり、道路に接しない部分ができたりすると、価値が大きく下がります。建物が建っている場合や、マンションのような区分所有建物では、現物分割は現実的でないことが多いでしょう。

3. 全体を売って代金を分ける(換価)

共有者全員で不動産全体を売却し、代金を持分に応じて分ける方法です。

  • 共有者それぞれに、持分に応じた譲渡所得の課税が生じます。所有期間が売った年の1月1日現在で5年を超えるかどうかで、長期・短期の税率が分かれます(国税庁 No.3208・No.3211)。
  • 自宅として住んでいた共有者には、居住用財産の特例が使える場合がありますが、要件は共有者ごとに確認する必要があります。

全体を売ると市場で最も高い価格が付きやすく、公平感も得やすい方法です。一方で、共有者のうち一人でも売却に反対すると実行できません。

4. 持分を交換して単独所有にする

兄弟でA土地とB土地をそれぞれ2分の1ずつ共有しているような場合、A土地の持分とB土地の持分を交換して、それぞれが単独で所有する形にする方法です。

土地と土地のように同じ種類の資産の交換で、互いに1年以上所有していること、交換後も交換前と同じ用途に使うこと、価額の差が高い方の20%以内であることなどの要件を満たせば、固定資産の交換の特例により譲渡がなかったものとされます(国税庁 No.3502)。交換差金を受け取った場合は、その部分に課税があります。

5. 話し合いがまとまらない場合:裁判所の手続き

共有者の間で協議が調わないとき、または協議ができないときは、裁判所に共有物の分割を請求できます(民法258条)。裁判所は、次のいずれかの方法で分割を命じます。

  • 現物を分割する方法
  • ある共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分を取得させる方法(いわゆる賠償分割)
  • これらの方法で分割できない場合や、分割で価格が著しく減少するおそれがある場合は、競売

各共有者はいつでも分割を請求できますが、5年を超えない期間で分割しない旨の契約をすることもできます(民法256条)。

また、令和5年4月1日施行の民法改正により、所在等不明共有者(他の共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない場合)がいるときは、裁判所の手続きを経て、その持分を取得したり、第三者に譲渡する権限を得たりできる制度が設けられました(民法262条の2・262条の3)。取得した共有者は、時価相当額を支払う必要があります。

方法ごとの比較

方法合意の要否主な税金向いている状況
持分の買取り当事者の合意売主に譲渡所得。低額なら買主に贈与税一人が住む・使う不動産
持分の贈与当事者の合意受贈者に贈与税親子間など、対価なしで集めたい場合
現物分割全員の合意持分に応じた分割なら譲渡なしの扱い広い更地で、分けても価値が保てる土地
全体の売却全員の合意各共有者に譲渡所得誰も使う予定がない不動産
持分の交換当事者の合意要件を満たせば交換の特例複数の共有不動産がある場合
共有物分割請求不要(裁判所が判断)分割の方法に応じて課税話し合いが成立しない場合

(民法・国税庁の資料を基にAEGISが整理。税金は主なもので、個別の状況により異なります)

もめずに進めるための順番

  1. 登記と持分の現状を確認する:登記事項証明書で共有者と持分を確認します。亡くなった共有者がいれば、その相続人を把握します。
  2. 各共有者の希望を聞く:住み続けたい、現金化したい、持ち続けたいなど、希望は人によって異なります。
  3. 不動産の価値と使い道を把握する:査定や評価、賃貸に出した場合の収益などを確認します。
  4. 方法ごとの税引後の手取りを試算する:同じ価格でも、方法によって各人の手取りが変わります。
  5. 合意した内容を書面にし、登記まで完了させる:口約束のまま放置すると、次の相続で再び共有の問題が生じます。

実務上注意したいポイント

  • 持分だけを第三者に売ることもできるが、価格は下がりやすい:持分のみの売却は可能ですが、買い手は共有関係ごと引き受けるため、一般に価格は全体売却の按分額より低くなりがちです。
  • 相続税評価と時価を混同しない:共有の土地の相続税評価は、全体の評価額を持分で按分して求めます。親族間の売買価格をその評価額で決めると、時価との差が贈与と見られる可能性があります。
  • 共有者の判断能力にも目を向ける:共有者が高齢で判断能力が低下すると、売却や分割の手続きが進められなくなることがあります。

AEGISの視点

共有は、相続の時点では「公平」に見える分け方です。しかし実際には、決定を将来に先送りする仕組みになっていることが少なくありません。共有者が増え、世代が替わるほど、一人ひとりの持分は小さくなり、合意のハードルは上がっていきます。

AEGISは、共有の解消を検討するとき、法的な手段や税金の比較だけでなく、「その不動産を誰が、どう使い、どう次の世代に渡すのか」から考えることを大切にしています。例えば、一人が不動産を引き継ぐ代わりに他の共有者に金融資産を渡す、売却して得た資金をそれぞれの生活設計に生かす、といった形で、不動産以外の財産と組み合わせると解決の幅が広がります。

これから共有になりそうな不動産をお持ちの場合は、遺言や民事信託(いわゆる家族信託)で、共有を避ける形をあらかじめ設計しておくことも選択肢です。

相続前の段階で共有を避ける考え方は関連記事「不動産を相続する前に確認したいこと」で、不動産の判断の全体像は「不動産の購入・保有・売却を一体で考える」で解説しています。

相続した実家を兄弟で共有している場合は「相続した実家が空き家になったときの選択肢」、不動産と金融資産を組み合わせて分ける考え方は「自社株・不動産・金融資産を組み合わせた承継」もあわせてご覧ください。

共有不動産の評価や譲渡の税務については、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。

相続税の申告や相続の手続きをまとめて相談したい場合は、アイジス税理士法人・アイジスファミリーオフィスでもお受けしています。詳しくは、相続税申告・相続手続きのご相談をご覧ください。

まとめ

  • 共有不動産は、長期の賃貸、建替え、全体の売却などに共有者全員の合意が必要になり、時間が経つほど解消が難しくなります。
  • 解消方法は、持分の買取り・贈与、現物分割、全体の売却、持分の交換、裁判所での共有物分割請求に整理できます。
  • 持分に応じた土地の現物分割は、所得税では譲渡がなかったものとして扱われます。持分の売買や全体の売却では譲渡所得が、低額譲渡や贈与では贈与税が問題になります。
  • 所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の手続きで持分を取得する制度があります。
  • 具体的な方法と課税関係は、不動産の状況と共有者の事情によって異なります。

よくある質問

Q. 共有者の一人が売却に反対しています。他の共有者だけで売ることはできますか?

不動産全体の売却には、共有者全員の同意が必要です。反対している共有者がいる場合は、自分の持分だけを売る、反対している共有者に持分を買い取ってもらう、または裁判所に共有物分割を請求するといった方法を検討することになります。

Q. 兄弟に持分を安く売った場合、税金の問題はありますか?

時価より著しく低い価額で売買すると、買った側に時価との差額について贈与税が課税されることがあります。また、売った側は、受け取った代金を基に譲渡所得を計算します。親族間の売買では、価格の根拠を残しておくことが大切です。

Q. 土地を分筆して分けると、税金はかかりませんか?

持分に応じた現物分割であれば、所得税では譲渡がなかったものとして取り扱われます。ただし、分割後の土地の価額の比が持分割合とおおむね等しいことが前提です。差がある場合は、その部分について贈与や譲渡の問題が生じる可能性があります。分筆や登記の費用は別途かかります。

Q. 共有者の一人と連絡が取れません。どうすればよいですか?

まず戸籍や住民票などで所在を調べます。それでも他の共有者を知ることができない、または所在が分からない場合は、令和5年4月1日施行の民法改正で設けられた制度により、裁判所の手続きを経てその持分を取得する、または譲渡する権限を得ることが考えられます。持分を取得した共有者は、時価相当額を支払う必要があります。

Q. 相続で共有になりそうな不動産があります。今からできることはありますか?

遺言で取得する人を決めておく、生前に売却や組換えをして分けやすい財産にしておく、民事信託(いわゆる家族信託)で管理の権限を一人に集めておく、といった方法があります。どの方法が合うかは、不動産の性質と家族の状況によって異なります。

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参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『実務家のための「基本書&ハンドブック」 要点 譲渡所得【第一編 総説・不動産譲渡の特例等関係】(第4版)』塩野入文雄 著、法令出版、2020年、P.95、P.279-280
  • 『令和6年版 土地評価の実務』小野徹 編、大蔵財務協会、2024年、P.12

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。