資産管理会社の株式を評価すると、「思っていたより株価が高い」と感じることがあります。その大きな理由の一つが、特定の評価会社という区分です。
土地保有特定会社・株式等保有特定会社とは、相続税・贈与税で非上場株式を評価するときに、総資産に占める土地等や株式等の割合が一定以上の会社を、一般の会社とは別に扱う区分です。財産評価基本通達189に定められています。これらに当たると、上場会社の株価と比べる「類似業種比準方式」を使えず、原則として会社の財産の価値を積み上げる「純資産価額方式」で評価されます。
資産の大半が不動産や有価証券である資産管理会社は、まさにこの区分に当たりやすい会社です。この記事では、判定の基準、評価方法、判定を左右する要因を整理し、オーナーが何を確認すべきかを解説します。
特定の評価会社とは
非上場株式(取引相場のない株式)は、原則として、会社を規模に応じて大会社・中会社・小会社に区分し、類似業種比準方式、純資産価額方式、またはその併用で評価します(国税庁 No.4638)。評価方法の全体像は、関連記事「非上場株式の評価方法をどう検討するか」で解説しています。
ただし、資産の構成や営業の状況が一般の会社と大きく異なる会社に、上場会社との比較を前提とする方式をそのまま当てはめると、適正な評価にならないおそれがあります。そこで財産評価基本通達189は、次の6つを「特定の評価会社」として定め、それぞれに評価方法を設けています。
- 比準要素数1の会社
- 株式等保有特定会社
- 土地保有特定会社
- 開業後3年未満の会社等(比準要素数0の会社を含む)
- 開業前又は休業中の会社
- 清算中の会社
複数に当たる場合は、番号が後のものが優先されるとされています。資産管理会社で特に問題になるのが、2と3です。設立して間もない資産管理会社であれば、4に当たることもあります。
土地保有特定会社の判定基準
土地保有特定会社は、会社の各資産を財産評価基本通達で評価した価額(相続税評価額)の合計のうち、土地等の価額の合計が占める割合(土地保有割合)で判定します。土地等には、土地のほか借地権など土地の上に存する権利も含まれます。
判定の基準は、会社の規模によって異なります。
| 会社の規模 | 土地保有割合 |
|---|---|
| 大会社 | 70%以上 |
| 中会社 | 90%以上 |
| 小会社のうち、総資産価額(帳簿価額)が卸売業20億円以上、それ以外の業種15億円以上 | 70%以上 |
| 小会社のうち、総資産価額(帳簿価額)が卸売業7,000万円以上、小売・サービス業4,000万円以上、それ以外の業種5,000万円以上(上の行に当たらないもの) | 90%以上 |
| 上記以外の小会社 | 該当しない |
※財産評価基本通達189(3)をもとにAEGISが整理。会社規模は通達178の区分によります。
ここで押さえておきたいのは、割合の計算は相続税評価額で行う一方、小会社の基準額は帳簿価額で判定するという点です。路線価が上がれば土地保有割合も上がりますし、帳簿上の総資産が基準額を下回る小規模な会社は、土地の割合が高くても土地保有特定会社には当たりません。
また、判定の基礎となる土地等は、保有目的や期間を問わず会社が持つすべての土地等が対象とされています。販売用の土地(たな卸資産)も含まれます。
株式等保有特定会社の判定基準
株式等保有特定会社は、相続税評価額で計算した総資産のうち、株式等の価額の合計が占める割合が50%以上の会社です。土地保有特定会社と異なり、会社の規模にかかわらず一律の基準です。
ここでいう株式等は、株式、出資および新株予約権付社債で、所有目的や所有期間を問いません。国税庁の質疑応答事例では、外国株式や株式制のゴルフ会員権、証券会社が商品として保有する株式は含まれる一方、証券投資信託の受益証券や匿名組合の出資は含まれないとされています。また、専門書籍の解説では、上場不動産投資信託(会社型)の投資口は含まれるとする整理が示されています。
株式等保有特定会社になりやすいのは、次のような資産管理会社です。
- オーナーが経営する事業会社の株式を保有している(いわゆる持株会社型)
- 上場株式などの金融資産を会社で運用している
- 不動産を売却して、その資金で有価証券を保有している
当てはまると、どのように評価されるか
| 区分 | 同族株主等が取得する場合 | 同族株主等以外が取得する場合 |
|---|---|---|
| 土地保有特定会社 | 純資産価額方式 | 配当還元方式 |
| 株式等保有特定会社 | 純資産価額方式(納税者の選択によりS1+S2方式も可) | 配当還元方式 |
| 開業後3年未満の会社等 | 純資産価額方式 | 配当還元方式 |
※財産評価基本通達189-3・189-4、国税庁 No.4638 をもとにAEGISが整理。
S1+S2方式とは、会社が持つ株式等とその配当がなかったものとして、会社の規模に応じた原則的な方法で評価した部分(S1)と、株式等だけを純資産価額方式に準じて評価した部分(S2)を合計する方法です。事業の実態がある会社について、その部分に類似業種比準方式の考え方を反映させる趣旨と考えられます。
純資産価額方式では、会社の資産と負債を相続税評価額に置き換えて1株あたりの価額を計算します。その際、次の点が評価額に影響します。
- 評価差額に対する法人税額等相当額の控除:相続税評価額と帳簿価額の差(含み益)に一定割合を掛けた金額を差し引きます。国税庁の現行の財産評価基本通達186-2では、この割合は38%とされています(防衛特別法人税を含む税率の合計に相当する割合)。
- 3年以内に取得した不動産:会社が課税時期前3年以内に取得・新築した土地等や家屋等は、路線価などではなく、課税時期の通常の取引価額に相当する金額で評価します(同185)。
- 議決権割合50%以下の場合:株式の取得者とその同族関係者の議決権の合計が50%以下であれば、純資産価額の80%で評価します(同185)。
法人税等の税率の変更が法人税額等相当額の割合にどう反映されているかは、関連記事「防衛特別法人税は中小企業にどう影響するか」もあわせてご覧ください。
資産管理会社の株価が高くなりやすい理由
一般の事業会社では、類似業種比準方式の比重が大きいと、会社の利益や配当の水準が株価に強く反映されます。これに対して特定の評価会社は、原則として純資産価額で評価されるため、会社が持つ財産の相続税評価額がほぼそのまま株価に表れます。
資産管理会社は、もともと賃貸収入から生じた利益を会社に蓄積していく仕組みです。不動産や預金、有価証券が積み上がるほど純資産が増え、特定の評価会社に当たればそれがそのまま株価に反映されます。さらに、会社で不動産を取得した直後は、上記の3年ルールにより通常の取引価額で評価されるため、取得による評価の引下げ効果も限られます。
なお、国税庁は2026年4月から有識者会議で取引相場のない株式の評価方法の見直しを検討しており、第6回会議の資料では、土地保有特定会社と株式等保有特定会社を「資産管理会社」に整理し、有価証券や賃貸不動産、現預金などの特定資産の割合(帳簿価額ベース)で判定して純資産価額方式で評価する案が論点として示されています。通達改正の内容や適用時期は本記事の確認時点(2026年10月)では示されていないため、今後の改正に注意が必要です。
判定が変わる主な要因
土地保有割合や株式等保有割合は、日々の資産の動きで変わります。判定に影響する要因を整理すると、次のとおりです。
| 要因 | 判定への影響の方向 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 不動産の取得・売却 | 土地保有割合が上下する | 取得後3年以内の評価、売却代金の使い道 |
| 事業会社株式・有価証券の保有 | 株式等保有割合が上がる | 持株会社としての役割、配当の流れ |
| 現預金の増減 | 割合の分母が変わる | 納税資金・修繕資金としての必要額 |
| 路線価・株価の変動 | 相続税評価額ベースの割合が動く | 毎年の評価額の推移 |
| 会社規模区分の変化 | 判定基準(70%・90%)が変わる | 従業員数・取引金額・総資産(帳簿価額) |
| 設立からの年数・比準要素 | 開業後3年未満等に該当するか | 設立日、配当・利益・純資産の状況 |
※AEGISが判定の考え方を整理したものです。
判定を免れるための資産の組替えは否認され得る
財産評価基本通達189は、課税時期前に合理的な理由もなく資産構成を変動させ、それが株式等保有特定会社や土地保有特定会社と判定されることを免れるためと認められる場合は、その変動はなかったものとして判定すると定めています。専門書籍では、直前に借入れをして総資産を膨らませるようなケースが例として挙げられています。
評価の時点だけを意識した資産の動かし方は、かえって税務上のリスクを高めます。資産の構成を変える場合は、事業上・資産管理上の目的があることが前提です。
オーナーが確認しておきたいこと
- 毎期の判定を記録する:決算のたびに、相続税評価額ベースの土地保有割合・株式等保有割合と会社規模区分を試算し、推移を把握します。
- 会社の役割を確認する:持株会社なのか、不動産賃貸会社なのか、金融資産の運用会社なのかで、どの特定会社に当たりやすいかが変わります。
- 不動産の取得時期を把握する:3年以内に取得した不動産がある間は、評価額が高めに出る前提で計画します。
- 株式の移転時期と組み合わせる:贈与や売買で株式を移す時期は、評価額の見通しとあわせて検討します。
- 持合いの有無を確認する:グループ会社どうしで株式を持ち合っている場合は、評価の計算がさらに複雑になります。詳しくは関連記事「株式を持ち合うグループ会社の承継と評価」をご覧ください。
AEGISの視点
特定の評価会社に当たること自体は、悪いことではありません。会社の財産の実態に合った評価方法が適用されているとも言えます。問題は、オーナーが株価の水準を把握しないまま、資産を会社に積み上げ続けてしまうことです。
AEGISは、資産管理会社の株価を「会社に何を、どれだけ持たせるか」という所有設計の結果として捉えています。土地保有特定会社になるかどうかを気にして資産を組み替えるより、会社が担う役割、蓄積した資金の使い道(修繕、借入返済、役員報酬や配当)、株式を誰にいつ移すかを先に決め、その結果として株価の推移を確認する順番が大切だと考えています。
資産管理会社の株式と経営権を誰にどう引き継ぐかは「資産管理会社の株式と経営権の承継」で、そもそも資産管理会社をいつ設立すべきかは「資産管理会社はいつ設立を検討すべきか」で解説しています。
非上場株式の評価や資産構造の論点については、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。
まとめ
- 土地保有特定会社・株式等保有特定会社は、財産評価基本通達189に定める「特定の評価会社」の一部です。
- 土地保有特定会社は、相続税評価額ベースの土地保有割合が大会社70%以上、中会社90%以上(小会社は帳簿価額の総資産と業種により70%・90%・非該当)の会社です。
- 株式等保有特定会社は、会社規模にかかわらず株式等の割合が50%以上の会社です。
- 当てはまると、同族株主等は原則として純資産価額方式で評価され、資産管理会社の株価は会社の財産の評価額をほぼそのまま反映します。
- 合理的な理由のない資産の組替えは、判定上なかったものとされることがあります。具体的な判定と評価は個別事情によって異なります。
よくある質問
Q. 賃貸マンションを持つ資産管理会社は、必ず土地保有特定会社になりますか?
必ずではありません。判定は総資産に占める土地等の割合で行い、建物や預金、その他の資産が多ければ割合は下がります。また、小会社で帳簿価額の総資産が業種ごとの基準額を下回る場合は、土地の割合にかかわらず該当しません。毎期の決算をもとに試算して確認することが大切です。
Q. 事業会社の株式を資産管理会社に持たせると、どうなりますか?
資産管理会社の総資産に占める株式等の割合が50%以上になると、株式等保有特定会社に当たり、原則として純資産価額方式で評価されます。納税者の選択により、S1+S2方式で評価することもできます。持株会社にする目的や配当の流れとあわせて検討する必要があります。
Q. 判定を避けるために、相続の前に借入れをして資産を増やしてもよいですか?
財産評価基本通達では、合理的な理由もなく資産構成を変動させ、それが特定の評価会社と判定されることを免れるためと認められる場合は、その変動はなかったものとして判定するとされています。評価だけを目的とした資産の組替えは避け、事業上の目的に沿って判断することが重要です。
Q. 家族以外の役員などが株式を相続した場合も、純資産価額で評価されますか?
同族株主等以外の株主が取得した株式は、土地保有特定会社や株式等保有特定会社であっても、配当還元方式で評価されます。ただし、誰が同族株主等に当たるかは議決権割合などで判定されるため、株主構成をもとに確認が必要です。
Q. 純資産価額方式で計算するとき、含み益にかかる税金は考慮されますか?
相続税評価額と帳簿価額の差額(評価差額)に対する法人税額等相当額を控除して計算します。国税庁の現行の財産評価基本通達186-2では、この割合は38%とされています。この割合は、令和8年4月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した株式等の評価から適用されます(会社の決算期ではなく取得の時=課税時期で判定します)。それより前に取得した場合は従来の割合(37%)で評価します。
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参考資料・出典
公的資料・一次情報
- 国税庁 財産評価基本通達 第8章第2節「取引相場のない株式」189(特定の評価会社の株式)、189-2〜189-4
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/05.htm
確認日:2026-10-07 - 国税庁 財産評価基本通達 185(純資産価額)、186-2(評価差額に対する法人税額等に相当する金額)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/04.htm
確認日:2026-10-07 - 国税庁「財産評価基本通達の一部改正について」通達のあらまし(令和8年3月25日付課評2-28、別添2(4))
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/r0803/pdf/01.pdf
確認日:2026-10-09 - 国税庁 タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」(令和8年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm
確認日:2026-10-07 - 国税庁 質疑応答事例「判定の基礎となる『株式等』の範囲」(令和7年8月1日現在の法令・通達等)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/10/01.htm
確認日:2026-10-09 - 国税庁『取引相場のない株式の評価に関する有識者会議』資料(第1回〜第6回、2026年4月〜)
確認日:2026-10-09
書籍
- 『令和8年版 非上場株式の評価の仕方と記載例』松本好正 著、一般財団法人大蔵財務協会、P.194-213
- 『資産家のためのファミリーガバナンスガイドブック 〜相続・事業承継・資産運用・ファミリーオフィス〜』辻・本郷 税理士法人 ファミリーオフィス事業部ほか 編著、東峰書房、P.180-181
