持株会社(ホールディングス)をつくる目的|承継・株価・グループ経営への影響と、つくる前に確認したいこと

複数のビル模型が並ぶジオラマを囲んで検討する5人

持株会社(ホールディングス)とは、他の会社の株式を保有し、その会社を支配・管理することを主な役割とする会社です。中小企業でも、事業承継の準備として「ホールディングス化」が提案されることが増えています。

結論からいえば、持株会社は「株主を一本化する」「グループの経営と所有を分けて整理する」「後継者への承継の器を用意する」といった目的があってはじめて効果を発揮する仕組みです。株価が下がるかどうかだけで判断すると、つくった後に評価が思ったように下がらない、維持コストが増える、組織が複雑になる、といったことが起こり得ます。

この記事では、持株会社をつくる目的を整理したうえで、つくり方ごとの手続と課税、自社株の評価への影響、後継者の取得資金への影響を順に見ていきます。

持株会社をつくる目的を整理する

持株会社の目的は、大きく次の4つに分けられます。どれを主な目的にするかで、つくり方も、その後の運営も変わります。

目的期待すること確認したいこと
1. 株主の一本化事業会社の株主を持株会社1社にまとめ、意思決定を安定させる持株会社自体の株主構成をどう設計するか
2. グループ経営の整理複数の事業会社を兄弟会社として並べ、管理・資金配分を一元化する管理コストと、各社の独立性のバランス
3. 承継の器後継者が持株会社の株式を持つ形で、グループ全体を承継する後継者が持株会社の株式を取得する方法と資金
4. 資産と事業の分離不動産や余剰資金を持株会社側に置き、事業会社を身軽にする移転時の課税、各社の株価への影響

「株価対策になると聞いた」という理由だけで設立を急ぐ前に、まずこの表のどれに当てはまるのか、目的を言葉にしておくことが大切です。不動産を中心とした資産管理会社の設立判断との違いは、関連記事「資産管理会社はいつ設立を検討すべきか」で解説しています。

持株会社のつくり方と課税

持株会社のつくり方には、主に次の4つがあります。

1. 株式移転(持株会社を新しく設立する)

株式移転とは、既存の事業会社の株主が持つ株式をすべて新設する会社に移し、その対価として新設会社の株式を受け取る手続です。会社法上、事業会社では株主総会の特別決議による承認が必要です(会社法804条1項、309条2項12号)。

  • 株主(個人)の課税:株式移転により新設会社の株式だけを受け取る場合、所得税法上、旧株の譲渡はなかったものとして扱われ、その時点で譲渡所得課税は生じません(所得税法57条の4第2項)。
  • 会社の課税:完全支配関係や支配関係が継続する見込みであるなど、税制適格要件を満たせば、事業会社の資産を時価評価する必要はありません。
  • 資金:新たな資金は不要ですが、オーナーが持株会社の株式を持つ形になるだけで、オーナーの手元に現金は入りません。

2. 株式交換(既存の会社を親会社にする)

すでにある会社(たとえばオーナーの資産管理会社)を親会社とし、事業会社をその100%子会社にする方法です。これも原則として株主総会の特別決議が必要です。親会社が事業会社の株式の3分の2以上を直接保有している場合には、少数株主に金銭を交付しても税制適格要件のうち金銭等不交付要件の対象とならない取扱いがあり、少数株主の整理と組み合わせて使われることもあります。

3. 株式の買取り(持株会社が株式を買う)

オーナーが設立した持株会社が、オーナーや他の株主から事業会社株式を買い取る方法です。売り手であるオーナーには株式の譲渡所得が生じ、持株会社は買取資金(多くは金融機関からの借入れ)が必要になります。その代わり、オーナーは現金を受け取ることができ、他の家族への財産の配分や納税資金に充てる余地が生まれます。

4. 会社分割・現物出資(事業を子会社に出す)

既存の会社の事業を新しい子会社に分割で移し、元の会社を持株会社にする方法です。事業や従業員、契約を移すため、許認可や債権者保護手続などの確認事項が多くなります。

自社株の評価への影響

持株会社をつくると、オーナーや後継者が持つ株式は「事業会社の株式」から「持株会社の株式」に置き換わります。相続税・贈与税の計算では、持株会社の株式を財産評価基本通達に従って評価することになり、ここに思わぬ落とし穴があります。

株式等保有特定会社

財産評価基本通達では、会社の総資産(相続税評価額ベース)のうち株式等の価額の合計額の割合が50%以上の会社を「株式等保有特定会社」とし、原則として純資産価額方式(またはS1+S2方式)で評価します(財産評価基本通達189(2)、189-3)。持株会社は資産の大部分が子会社株式であることが多いため、この区分に該当しやすく、事業会社の株式を直接持っていた頃に使えた類似業種比準方式が使えなくなる場合があります。

開業後3年未満の会社

新しく設立した持株会社は、開業後3年未満の会社として、原則として純資産価額方式で評価されます(財産評価基本通達189(4)、189-4)。設立直後に相続が起きると、評価が想定より高くなることがあります。

評価差額に対する法人税額等相当額

純資産価額方式では、資産の含み益(評価差額)に対する法人税額等に相当する金額として38%を控除できます(財産評価基本通達186-2)。この38%は、令和8年4月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した取引相場のない株式等の評価から適用され、それ以前の取得分は従来の37%です。ただし、株式移転・株式交換などにより著しく低い価額で受け入れた株式については、受入れ時の差額部分をこの控除の対象から外す定めがあります(同通達186-2(2))。株式移転で設立した持株会社では、子会社株式の受入価額の決まり方によって、この定めが影響することがあります。

株式等保有特定会社の判定や、判定で確認すべきことは、関連記事「土地保有特定会社・株式等保有特定会社とは」で詳しく解説しています。

後継者の取得資金と、グループ内のお金の流れ

持株会社が事業会社株式を買い取る方法(つくり方3)は、オーナーの財産を「株式」から「現金」に変え、後継者が持株会社の株式を取得するときの価額を抑える効果が期待される一方、持株会社の借入れが残ります。その返済原資は、事業会社からの配当や経営指導料などになります。

  • 配当:持株会社が100%子会社から受ける配当は、受取配当等の益金不算入の制度により、原則として持株会社で課税されません(法人税法23条1項)。
  • 経営指導料など:持株会社が実際に提供する役務に見合った金額でなければ、税務上問題になり得ます。
  • 返済期間:事業会社の利益水準から見て、無理のない返済計画かを確認します。

後継者が持株会社の株式を取得する方法(贈与・売買・相続)は、事業会社株式の場合と同じように比較が必要です。後継者に議決権を集める考え方は、関連記事「自社株を後継者に集約する方法」も参考になります。

つくり方ごとの比較

比較の観点株式移転株式交換株式の買取り会社分割
親会社新設既存の会社既存または新設の会社元の会社が親会社になる
オーナーの手元資金入らない入らない(原則)入る(譲渡所得課税あり)入らない
親会社の資金負担なしなし(原則)買取資金が必要なし
主な手続特別決議、登記特別決議、登記株式の譲渡承認など特別決議、債権者保護、労働契約の承継
評価上の注意開業後3年未満、株式等保有特定会社株式等保有特定会社借入金を含めた純資産、株式等保有特定会社事業を移した子会社の評価区分

実務上注意したいポイント

  • 持株会社の株主構成を先に決める:持株会社をつくっても、その株主が分散していては目的を果たせません。誰が、どの割合で持株会社の株式を持つのかを先に設計します。
  • 維持コストを見積もる:会社が1社増えれば、決算・申告・登記・役員会の運営などの手間と費用が増えます。
  • 事業承継税制との関係:法人版事業承継税制の利用を検討している場合、持株会社をつくることが要件にどう影響するかを事前に確認する必要があります。
  • 金融機関への説明:既存の借入れの契約や保証の扱いに影響することがあります。
  • 「つくれば下がる」と考えない:評価が下がるかどうかは、子会社の利益・純資産、持株会社の資産構成、設立からの年数によって異なります。

AEGISの視点

持株会社は、オーナー企業にとって「承継の器」になり得る仕組みです。しかしAEGISは、持株会社をつくること自体を目的にしないことが大切だと考えています。

まず問うべきは、「10年後、誰がグループ全体の意思決定を担い、誰がどの財産を引き継いでいるか」です。その姿から逆算して、持株会社が必要か、必要ならどのつくり方が合うかを考えます。たとえば、後継者以外の家族に現金で財産を渡したいなら株式の買取りが候補になり、オーナーの手元資金が不要で株主を一本化したいだけなら株式移転が候補になります。

また、持株会社は一度つくると簡単には元に戻せません。株価・資金・経営体制・家族への配分という4つの面で、設立前と設立後の姿を並べて比べることが、後悔しない判断につながります。グループの会社が増えすぎた場合の整理の順番は、関連記事「グループ会社を合併や株式交換で整理する」で解説しています。

持株会社と自社株の評価・承継の論点については、アイジス税理士法人の専門領域でもAEGISの考え方を紹介しています。

まとめ

  • 持株会社は、株主の一本化、グループ経営の整理、承継の器、資産と事業の分離などの目的があってはじめて効果を発揮します。
  • つくり方には、株式移転・株式交換・株式の買取り・会社分割などがあり、オーナーの手元資金や親会社の資金負担、手続が異なります。
  • 持株会社の株式は、株式等保有特定会社や開業後3年未満の会社として純資産価額方式で評価されることがあり、「つくれば株価が下がる」とは限りません。
  • 買取り方式では、持株会社の借入れの返済原資を事業会社からの配当などで確保する計画が必要です。
  • 具体的な効果や適否は、会社と家族の個別事情によって異なります。

よくある質問

Q. 持株会社をつくると、必ず株価は下がりますか?

必ず下がるわけではありません。持株会社は株式等保有特定会社に該当しやすく、設立直後は開業後3年未満の会社として純資産価額方式で評価されるのが原則です。子会社の利益や純資産の状況、持株会社の資産構成によって結果は変わるため、設立前に試算することが大切です。

Q. 株式移転で持株会社をつくると、オーナーに税金はかかりますか?

株式移転により新設される持株会社の株式だけを受け取る場合は、所得税法の特例により、その時点で譲渡所得の課税は生じません。ただし、金銭などを受け取る場合は扱いが異なるため、対価の内容を確認する必要があります。

Q. 持株会社と資産管理会社は何が違いますか?

明確な法律上の区別はありません。一般に、事業会社の株式を持ってグループを統括する会社を持株会社、不動産や金融資産を持って管理する会社を資産管理会社と呼ぶことが多く、1社が両方の役割を担うこともあります。目的によって、評価や運営上の注意点が変わります。

Q. 持株会社が事業会社の株式を買い取る資金は、どう返済するのですか?

多くの場合、事業会社からの配当を返済原資にします。100%子会社からの配当は、受取配当等の益金不算入の制度により原則として持株会社では課税されません。返済期間と事業会社の利益水準から、無理のない計画かを確認します。

Q. 持株会社をつくった後、事業会社を売却することはできますか?

持株会社が事業会社株式を売却することは可能です。その場合、売却益は持株会社に生じ、オーナー個人が直接売却する場合とは課税関係も手元に残る資金の流れも変わります。将来の売却の可能性があるなら、持株会社をつくる前に比較しておくことが望まれます。

関連するAEGISのソリューション

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  • 資産管理会社:資産管理会社の設立や既存法人の見直しについて、資金移動・税負担・維持費・株式の承継まで確認します。
  • 自社株評価と資本設計:非上場株式の評価と株主構成を確認し、承継・売買・寄附などの目的に合う資本設計を検討します。
  • 事業承継:後継者、経営権、株式、資金、ご家族の意向を確認し、贈与・相続・売買・M&Aなどを比較しながら承継計画を検討します。
  • 事業オーナーの方へ:会社と株式、ご家族の承継を一つの計画として整理する、AEGISの支援の流れをまとめています。
  • 社会貢献型事業承継:自社株・経営権・ご家族への配分と、社会貢献の形を一つの設計として検討します。
  • 不動産オーナーの方へ:3つの独自分析で承継の負担と資金を確認し、不動産ごとの方針を決める支援の流れをまとめています。
  • 高所得者の方へ:所得と資産の両面から、税負担と資産形成を整理する支援をまとめています。

参考資料・出典

公的資料・一次情報

書籍

  • 『サクサクわかる!株主対策の税務』佐藤信祐 著、清文社、2021年、第16章(P.116-125)、第18章(P.132-137)
  • 『組織再編・資本等取引をめぐる税務の基礎(第6版)』牧口晴一・齋藤孝一 著、中央経済社、2024年、第7編(P.630-645)
  • 『新版〔目的別〕組織再編の最適スキーム 法務・会計・税務』貝沼彩・北山雅一・清水博崇・齊藤修一 著、清文社、2020年、第3章3-3(P.169-171)

この記事の監修者

監修者 保手浜 洋介

保手浜 洋介

ほてはま ようすけ

公認会計士・税理士・宅地建物取引士|アイジスグループ代表

相続税・資産税、事業承継、非上場株式評価、 不動産保有設計、ファミリーオフィス業務を 専門領域とする。

税務・会計の専門知識を基盤に、 事業オーナーや資産家の資産管理、 事業承継、財産承継に関する助言を行う。

AEGIS Knowledgeでは、税務・資産管理・ 事業承継等に関する記事の専門的な監修を担当する。